破壊
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「時々何もかも壊してしまいたい気分になるわ」
 そりゃまた物騒なことを言うね。お前が言うと洒落にならん。前科持ちの自覚がないってのも困ったもんだな。
「ぜーんぶ壊して作り直したらすっきりするんじゃないかしら」
 いったい何に対してすっきりしたいのか、そこんとこはっきりさせて貰おうじゃないか。
 俺がそう言うと、ハルヒは尖った錐のような眼光を俺に向けた。
「何もかも、よ」
 何もかも? すべてを?
「SOS団も────俺も、か?」
「そうよ」
 相変わらず触れれば切れそうな視線。
「特に、あんたを、よ」
 俺? 俺が気に食わないからって何もかも壊すのかよ、この女。
「俺のどこが気に入らないのか教えてくれ」
 直せるのか自信はないが、俺のせいで滅びるとあっちゃ世界に対して申し訳が立たない。
 ハルヒは俺のネクタイを掴むとその馬鹿力で引き寄せた。
「何もかもよ。その間抜け面もやる気のないところも、それでいてあたしのすることにちゃんとついてくるところも、文句言いながらあたしの言いたいことがちゃんと分かってるところも」
 そりゃ褒めてるのかけなしてるのかどっちだ。
「その何もかも全部────全部、好きなのが気に入らないのよ!」
 それだけ言うとネクタイを離し、ぷいっと横を向いてしまった。
 唐突な、身勝手な告白。
 だったら俺も言わせて貰うけどな。
「俺も気に入らねえな。お前の身勝手で我が儘で、素っ頓狂な思いつきに毎度人を巻き込みやがって、週末の探索では毎回奢らせやがるし」
 だけどな。
「それでもいつも俺たちを引っ張って、前向きに突き進んでいくお前の笑顔がどうしようもなく好きってのが、気に入らねえ」
「……気が合わないわね」
「まったくだ」
 気が合わないはずなのに何でお前はそんな嬉しそうなのかね。
 そんな顔を見ていたら、俺も自分の衝動が抑えられなくなるじゃねえか。

「こんなキス1つで舞い上がるほど嬉しいなんて、やっぱり気に入らないわ」
 まったく、同感だよ、やれやれ。


  おしまい。