羽化
ミニSS・小ネタ | 編集

「最近涼宮も大人しくなったよな」
 昼休み、俺は相変わらず谷口、国木田と顔をつきあわせて弁当を突いている。別に毎回ハルヒのことばかり話している訳ではないが、どうも谷口はこの話題が好きらしい。
「あいつが大人しいなんてことがあったか?」
 相変わらずの暴走ぶりなんだがな。最近も花見だ何だと浮かれて騒いだばかりだというのに。
「大人しい、とはちょっと違うんじゃない? なんて言うか、社交的にはなったよね。クラスメイトとも話すようになったしさ」
 国木田が口をはさむ。
「以前はキョンとしか話さなかったのになー。これも愛の力ってやつか?」
 うるせえ、何が愛だ何が。だから俺とハルヒはそんなんじゃないと言っているだろうが。
「そんなこと言ってていいの? 僕は涼宮さん見ていると蝶の羽化みたいだなって思うよ」
「羽化?」
 またいきなりだな。何でそうなるんだ。
「そう、羽化。幼虫だったときはどっちかというと気持ち悪いとか言われて嫌われるのに、成虫は綺麗で注目されるでしょ」
 別に以前のハルヒが気持ち悪いってわけではないと思うが。
「だからそうじゃなくてさ、見た目の問題じゃなくて、イメージの問題かな。周りの人間の、蝶に対するイメージ。だからさ、うかうかしてると誰かに捕まえられちゃうんじゃない?」
 それは、ない。だってあのハルヒだぞ?
 国木田はクスクス笑うとこう付け加えた。
「やっぱりキョンのおかげ何じゃないかと思うよ」
 俺のおかげかどうかはともかく、なんとなく分からないこともないかな。以前のハルヒならわざわざ近寄ろうと思うヤツなんて、特殊なプロフィールを持っているヤツ以外いなかったわけで、って俺は特殊なわけではないがまあおいといて。
「てことは何だ? 涼宮はキョンによって大人にされたってことかよ!?」
 おい谷口! いきなりでかい声で何言ってるんだよ! その発言はいろんな誤解を生じかねないだろ!
 クラスの視線が一気に俺たちに集まるのを感じる。おい、「やっぱりな」「もうそこまで……」とかひそひそやるな! 何がやっぱりなんだよ、そこまでってどういう意味だ!
「……ちょっとキョン?」
 ただでさえ焦るってのに、背後からかけられた声に俺の焦りは最高潮だぜ畜生。このままいろんな意味で昇天できそうだ。
「……あんたねえ……」
 いや、誤解だハルヒ。俺は何も言ってない。何も言ってないのに勝手に谷口が勘違いしただけであってだな、これは……。
「誰にも言うなって言ったでしょうが、このエロキョン!!!」
 だから俺は言ってないっつーの!

 どうやら誤解を解くチャンスは永遠に失われたようだ……。
 ああそうだよ、さなぎだったハルヒを脱皮させたのは俺だよ、何か文句あるか? 谷口。



誤解でも何でもねーじゃんw