終焉
短編 | 編集

ハルヒスレ90
551 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日: 2008/05/28(水) 12:03:46 ID:z9mk69zt
怪獣から子供と子犬を庇って死んだキョン

ってのがあったから小ネタを書いたんだが、これは帰ってきたウルトラマンネタらしい。
そんな昔の特撮知らねーよ_| ̄|○
前半鬱注意

「涼宮ハルヒから異常な情報フレアを観測」
「閉鎖空間が発生しました! 全世界を覆い尽くす勢いです!」
「ふえぇ、時間振動が……こんな時空震今まで見たこともないです……!」

 嘘でしょ、キョン。
 ねえ、嘘でしょ。
 起きてよ。
 目を開けてよ。
 声を聞かせてよ。
 名前を呼んでよ。

「この情報フレアは情報統合思念体をも凌駕する。時空改変に対するいかなる介入も無効」
「ダメです、閉鎖空間に侵入できません」
「時空が歪んでTPDDが使えません! もしかしたらこの時間平面も……!」

 嫌。イヤ。
 こんなの認めない。
 キョンがいなくなるなんて。
 キョンがいない世界なんて。

 キョンがいない世界なんて、

「涼宮ハルヒはこの世界を改変ではなく破壊しようとしている」
「やはり彼がいなくなったという現実は受け入れられませんでしたか」
「……わたしがいた未来があるのか……わたしの存在ももうすぐ消えるかもしれません……」


 ────要らない。


『アホか』

 ! キョン!?

『お前らしくもない』

 キョン! ねえ、キョンなの!? どうして!?

『さあ、幽霊にでもなったんだろ。それより、そんな後ろ向きの考えはお前らしくもない』

 な、何よ! だって、あんたがいない世界なんて面白くも何ともないわ。
 あたしあんたのことが────

『こんなことになってから言うのは反則かもしれないがな、俺はいつだって前を向いて突っ走っているお前が好きだったんだ』

 あたしも好きだった。ううん、今でもキョンが好き!
 なのに何で勝手に死ぬのよ!
 何であたしを1人にするのよ!

『1人じゃない、みんながいるだろ。長門も古泉も朝比奈さんも、きっとお前を支えてくれる』

 わかってるわよ。わかってるけど、でも!

『でも、じゃねーだろ。現にお前は世界の終わりを願ってるじゃねえか。もしお前が願って本当に叶うとしたら、お前は何を願う。やっぱり世界の終焉か?』

 何よ、偉そうに! そんなの決まってるでしょ!
 あたしの願い、本当の願いは…………


──────────

「って言う夢を見たんだが」
 妙な夢を見た翌日、いつも通り学校に行っていつも通り授業を受けた後、文芸部室で後半の微妙な部分を省いてその話をすると、古泉はいつもの笑顔を忘れたらしく心底呆れた顔をして俺を眺めた。
「はあ、夢だと思ってるんですか」
 何だその溜息は。て、なんですと? 「夢だと思ってる」?
 てことは、もしかしてあれは夢じゃなく……。
「それは夢ではない」
 それまで本を読んでいた長門が顔を上げて断言する。よりによって長門が言うか。他の誰が言うより疑いようがないじゃねえか。
「キョンく~ん、良かったですぅ~」
 朝比奈さんは涙を浮かべて俺を見つめている。いいですね、その表情たまりません、ってそれどころじゃねえぞ。全員で俺をかついでいるわけでもなかったら、まさか。

「まさか俺、1回死んだって言うんじゃないだろうな!!」

 俺の叫びを3人は無言で肯定した。マジか。シャレにならん。
 俺が死んで、ハルヒはこの世界に興味を失ったっていうのか。
 俺が死んで、ハルヒはこの世界を壊そうとしたっていうのか。

『あんたがいない世界なんて面白くも何ともないわ』
『あたしも好きだった。ううん、今でもキョンが好き!』

「何を突然赤くなっていらっしゃるんですか」
 うるせえ、何でもねえよ!
「それより、いったいどうして涼宮さんが思いとどまったのか、その辺りがいまいちはっきりしないのですが、ご説明願えませんか」
「断る」
「なるほど」
「何がなるほどなんだ」
「つまり説明したくないようなことがあった、と理解させて頂きます」
 俺はできるだけ冷たい視線を古泉に向けた。何でわざわざそうやって含みのある解釈をしたがるのかね、こいつは。しかもそれが当たってるってのがシャクに障る。
 そういやハルヒはこの件をどう思っているんだ。
「涼宮ハルヒも時空改変の後、寝具の中に自らを移動、そこで目覚めたと自覚している」
 ってことはやっぱり夢オチか。
「しかしこれで、あなたがいなくなったときの涼宮さんの動向がはっきりしました。どうかあなたも身の回りには気をつけてください」
 へいへい、せいぜい気をつけるさ。だが次があってもイヤだが、次は大丈夫な気がするけどな。
 きっとあいつはもう後ろ向きに世界を壊そうなんて考えたりしない。


 具体的に何があったのかは時間のあるときにでも長門に訊くことにしよう。そろそろ部室のドアが蹴破られる頃だからな。
「やーっほー!! みんな揃ってるわね!」
 ほらな。いつも通りにパワー全開の団長様登場。
「……お前は元気だな」
 俺の呟きを耳ざとく聞きつけたハルヒは、俺にぐっと顔を近付けて大輪の花が開いたような笑顔を見せた。
「当たり前じゃない! あたしはいつだって前向きに突き進んで行くんだから、元気なくしてる暇なんてないのよ!」
 是非ともそう願いたいものだぜ。
 ハルヒは突然真剣な表情になって俺を見つめた。
「……だからキョン、あんたもしっかり付いてきなさい! 突然いなくなるんじゃないわよ!」
「ああ、わかってるさ」
 夢だと思っていたとはいえ、俺は昨夜の後悔の念を忘れてはいない。
 自分が死んだと自覚したとき、そしてハルヒの方こそ生命活動を停止したんじゃないかと思うほど蒼白の顔を見たとき。
 ハルヒにそんな表情をさせてしまったことも、そして俺はもうふれあえない状況になってから自分の気持ちを自覚したことにも、死ぬほど後悔した。って既にあの時は死んでいたらしいが。

「ハルヒ」
 俺は正面からハルヒの顔を見返した。
「な、何よ」
 一応真剣な表情を作ったつもりだからな。ハルヒも戸惑ったらしい。
 さて、ここで俺がこれを言ったら、こいつは怒るかね。しかし、あえてこの3人の前でいうことが、どうやら多大な迷惑をかけたらしい3人への贖罪にならないか。

「俺はいつだって前を向いて突っ走っているお前が好きだ」
「へっ!?」

 ハルヒはまず驚きに目を見開き、それから俺が言ったことを理解したのかみるみる顔を真っ赤に染め、
「な、何よ……バカキョン……」
 と弱々しく呟いたかと思うと座り込んだ。
「おい、ハルヒ?」
 てっきり怒鳴りつけられると思っていたのに、意外な反応だ。
「……うっ……ぐすっ……」
 おい、こいつはハルヒだよな。朝比奈さんじゃないよな。
 座りこんで嗚咽を漏らすハルヒに俺は戸惑った。せいぜい殴られ怒鳴られるって反応しか想像していなかったのに、まさか泣くとは。
「おい、何泣いているんだよ。どうしたんだよ」
「うるさいバカキョン」
 おい、それでも憎まれ口をたたくのかよ。
「……昨日、あんたが、……死んだ夢見たのよ」
 まだしゃくり上げながらそれでも説明を始めたが、その一言目で俺は理解した。確かに今のセリフは幽霊か何かになっていたらしい俺が言ったのと同じだ。ハルヒはそれを思い出したんだろう。
「わかった、すまん、もういいから」
 俺もハルヒの前にしゃがんで泣いているハルヒを抱き寄せた。
「俺はここにいる」
「……うん」
 どうやら俺が現在生きていられるのはハルヒのおかげらしいからな。その能力で生かされたことについて卑屈になるのはこいつに失礼だろうが、だったらせめて悪い夢を忘れるように努力するくらいはしなければならないだろう。

 気がつくと気を利かせたのか呆れたのか、3人ともいなくなっていた。なんつーか、すまん。後でお茶でも奢るから許せ。
「って、おい」
 俺が周りに意識を向けている間に、俺の腕の中でぐずっていたハルヒはそのまま寝ちまいやがった。おい、どうすりゃいいんだよ。
「しょうがねえな」
 悪い夢を見た日はその後眠れなくなったりするもんだ。もしかしたら寝不足だったのかもな。
 俺は体勢を変えて、あらためてハルヒを抱えると床に座り込んだ。こいつが起きるまでこうしててやるさ。

 せめて、今度はいい夢が見られるようにな。


──────────

 あたしの願い、本当の願いは…………
 あんたとずっと一緒にいたいってことなんだからね、キョン!


  おしまい。