手紙
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「あんた昼休みに女の子から手紙もらってたわよね」
 何だ、見てたのか。確かに封筒を渡されたがそれが? それに見てたなら昼休みに訊けばよかったじゃねえか、もう放課後だぞ。
「ラブレターなんじゃないの?」
「多分そうだろうな」
 俺が諦め半分に言うとハルヒは眉をつり上げた。
「ダメよ」
「何が」
「SOS団の団員は恋愛禁止なの! ラブレターもらって喜んでるようじゃ団員として認められないわ!」
 恋愛禁止って前にも言ってたよな、しかし別に喜んじゃいねえ、むしろ……。
 なんて暢気に考えてる間に、その手紙はハルヒの手に渡っていた。渡されたところを見られていた以上こうなることは既定事項だったので、俺は内心溜息を吐きつつハルヒの表情を見守った。正直、うやむやにしてしまいたかったのだがそう言うわけにも行かないか。
 そのハルヒは手紙を開いて……きょとんとしている、というのが正しいか。これはめずらしい表情だな。
「ねえ、これ、何であんたが女の子から渡されてるのよ」
 なおも首を傾げながら訊いてくる。そりゃそうだろうな。
「頼まれたんだよ、俺も彼女も。よそのクラスの奴かららしい」
 そう、このラブレターは残念ながら俺宛ではない。俺に渡してきた女子クラスメートは、他のクラスの奴から頼まれた、と言っていた。そして何故か俺に「渡しておいてね」などと言って押しつけてきたというわけだ。何で俺が。
「じゃあ何でさっさと渡さないのよ」
 やっぱりそこをついてくるか。気にするな。
「忘れてたってことで勘弁してくれ」
 ハルヒは疑い深い目で俺を見たが、取りあえずは納得してくれたらしい。突然はじけたような笑顔になって、俺は思わず視線をそらした。
「で、それどうするんだ」
 俺はその「涼宮ハルヒ様」で始まるらしい手紙を横目に見ながらさりげなく訊いた。気にならないと言えば嘘になる。
「あたしはさっき団員は恋愛禁止だって言ったばかりでしょ! 団長自ら破ってどうするのよ!」
 なるほど確かにそうだが……。半分安心して半分がっかりしているのを自覚して溜息を吐いた。

 断る気だったってのはいいが、恋愛禁止ってことは俺に望みもないってことかよ。
 やれやれ。



 昼休み、キョンが女の子から手紙をもらっていた。やっぱりラブレターなのかしら。キョンがもてるなんて思ってもいなかったから凄く意外だったわ。
 そうよ、意外だっただけよ、そんなに気にならないわよ。気にしてるとしたら、SOS団団員が恋愛にうつつを抜かすなんてことになったら大問題ってことの方よ!
 と思いながら、あたしはキョンにすぐ手紙について問いつめることができなかった。
 放課後、めずらしく有希さえまだ来ていない部室でようやく思い切って訊くことができたわ。
「SOS団の団員は恋愛禁止なの! ラブレターもらって喜んでるようじゃ団員として認められないわ!」
 なんて言ったけど、キョンは全然喜んでいるように見えないから、ちょっとだけ安心してる。それにしても焦ったり照れたりくらいはするのかと思ったのに、何故かちょっと嫌そうな顔をしただけで、あたしがその手紙を取り上げるのも黙って見ていた。
 そんなキョンの態度がかえって気になる。何よ、余裕だって言うの?
 ……と思っていたのに。
 手紙を開いて最初の1行目を読んで、あたしは呆気にとられた。涼宮ハルヒ様。そう書いてある。これ、あたし宛?
「ねえ、これ、何であんたが女の子から渡されてるのよ」
「頼まれたんだよ、俺も彼女も。よそのクラスの奴かららしい」
 ……なあんだ。そっか、頼まれただけだったんだ。
 身体の力が抜けるのを感じた。ああもう、何安心してるのよ、あたしってば!
 自分の心情を読まれないために何ですぐに渡さなかったのか、と問いつめることで虚勢を張る。
「忘れてたってことで勘弁してくれ」
 何よその煮え切らない言い方。他に理由がありそうで、キョンの顔をまじまじと見てみるけど、いつもと変わらない。ま、いいわ、それで勘弁してあげるわ!
「で、それどうするんだ」
 キョンが気にしてるのは手紙を預かったという責任感なのか、それともSOS団団長に彼氏ができるかもしれないという事態に団員として心配しているのか、それとも……。
 なんてキョンに期待する方がどうかしてるわね。
「あたしはさっき団員は恋愛禁止だって言ったばかりでしょ! 団長自ら破ってどうするのよ!」

 そう言った後のキョンの複雑そうな表情は何を示しているのかしらね。
 ねえキョン、あんたがどうしてもって言うなら恋愛禁止令を撤回してもいいのよ。
 ただし、特別な場合だけだからね!


  おしまい。



ちょっとラストのハルヒが自己中思想かとも思ったが、ハルヒはある程度自己中なワケでまあいいやと。
恋愛感情は人を自己中心的にさせる要素でもあるし。
って言い訳しておくw