ワッフル! ワッフル!
短編 | 編集

ハルヒスレでわっふる!わっふる!(元は主にエロい画像などを公開して貰うことを期待している態度を示す2ちゃんねる用語だったようだが、この場合は文章の続きを期待していたってことです)してたときに書いたネタ。
#わっふるの語源はこちら
オリキャラ出しゃばりまくり注意。元ネタあり。糖度0だが本来の意味では甘そうな話。

「ねえ、通学路にあるカエルのマンホールだけど」
 いつもの活動とも言えないようなSOS団の活動中、突然ハルヒが何か思いついたらしい。
「確かにあるな。それがどうした?」
 どうせ俺しか答えないのがいつものことなので、仕方なく返事をする。なんだいったい。マンホールがどうしたんだ。
「あれでワッフル焼いたら美味しそうだと思わない?」
 ……ワッフル? ワッフルってあのベルギーの菓子か?
「そう、それ。マンホールの型がついて可愛いじゃない」
 可愛いって言ってもだな、あれは確か汚水用じゃなかったか。「おすい」とか書いてあるワッフルが美味しそうとも思えないんだが。それ以前に文字が反転するぞ。
「そんなことはどうでもいいのよ! 要はあのマンホールの蓋で焼いたワッフルが食べたいってこと!」
 やれやれ、また何か言い出しやがった。こいつのことだ、マンホールの蓋を盗んで来かねないじゃないか。そんなことして子供が落ちたりしたら大変だ。
「ちょうど僕の知り合いにあの蓋を作る工場に勤めている人がいます。譲ってくれるように交渉してきましょう」
「でかしたわ古泉くん! それでこそ副団長よ!」
 また(ハルヒにとってのみ)都合のいいときに都合のいい知り合いを持ち出してくる古泉によって、マンホールの蓋盗難事件は事前に回避されたが……ワッフルだって? 本当に焼くのか?
「あ、じゃあレシピ調べておきますね。美味しく作れるといいんですけど」
 既に命令されてもいないのに自分が作る気でいるSOS団専属メイドさん。あなたが作るなら砂糖と塩を間違えても美味しく作れるに決まっています。いやあ俄然楽しみになってきた。
「……」
 長門はこの話をしている間、一度も本から顔を上げなかった。

「う~ん、上手くいきませぇん……」
 涙目になっているのは朝比奈さん。前述の会話から数日後、古泉が本当にマンホールの蓋なんて物をもって来やがったので、調理部が使っているはずの調理室を占拠したSOS団によるワッフル制作大会が開かれている。しかしいざマンホールの蓋で生地を挟むと、潰れて横からはみ出してしまうのだ。このまま焼いてもクレープよりちょっと分厚い、ワッフルとはほど遠いものになってしまいそうだ。
「生地の強度が不足している。型になるマンホールの蓋の重量を支えられない」
 なるほどな。本来のワッフル型より遥かに重い。そりゃ生地も潰れるよな。
「こりゃもう諦めた方がいいんじゃないのか」
 思わずそう言った俺をハルヒはキッと睨んだ。
「諦めるなんて言葉、SOS団の辞書にはないの! あんたも団員その1なら肝に刻み込んで起きなさい!」
 銘じるって普通に言えばいいだろ、似たような意味でも刻み込むってなんか痛そうでイヤだ。
 それはともかく、じゃあどうすりゃいいんだよ。
「助っ人に登場してもらうしかないわね」
「助っ人?」
「そう、北高が誇る天才料理人、調理部長よ!」
 登場も何も、俺たちがごちゃごちゃやっているのを先ほどから調理部員たちが遠巻きに眺めているわけだが。
「お……俺?」
 当の調理部長氏は一瞬目を丸くしたが、次の瞬間には全力で断り始めた。
「断る! 無茶苦茶なことばかりやらせるんだろ、君たちは!」
 確かに調理室を借りたのも強引だが、しかしハルヒ相手に断るのは多分無理だろう。
「いいから四の五の言わずにやりなさい! それともできないから逃げるつもり!?」
 そう言われるとあからさまにムッとした顔をした。この人は高校を卒業したら調理師学校に進学するつもりと聞いたことがある。料理にはこだわりがあるのだろう。調理師学校って、やっぱ辻……いや、なんでもない。
「できないわけがないだろう。いいさ、やってやろうじゃないか!」

 口車に乗せられたことに気づいているのかいないのか、とにかく調理部長氏は手際よくワッフル生地の作成に取りかかった。それを「ほぇ~」と感嘆の声をあげて見つめる朝比奈さん。ハルヒは偉そうに腕を組んで眺めている。
 そうして出来上がった生地をマンホールの蓋で挟んでも、見事に潰れない生地が出来上がった。既存のレシピ通りにしか作れない俺たちとは大違いだ。
「よくやったわ! これであなたもSOS団の準団員よ! 光栄に思いなさい!」
「はあ……」
 多分光栄どころか全力で拒否したいというのが本音だろうが、ハルヒに口答えしても無駄なのを既に悟っているのか、曖昧な返事しかしなかった。

 その後、大きなワッフルを何とか焼き上げそろそろと型を外すと、女性陣から声が上がった。
「すごい! ちゃんとできてるじゃない!」
「うわあ、すごいです~!」
 調理部の女子部員も面白そうに覗き込んでいる。
 調理部長氏、お見事です。見事にカエルの絵柄のワッフルが焼き上がったのだから。「おすい」の文字が反転で書かれているのはこの際目を瞑ろう。
「君、この型はどこで手に入れたんだい?」
 達成感があるのかもっと挑戦したくなったのか、調理部長氏が俺にそんなことを聞いてきた。
「調達したのは古泉なんで俺は知りません」
「そうか、こういうオリジナルの型で小さい物があれば、文化祭のいい売り物になるとおもったんだけどね」
 それは面白いかもしれないな。案外北高名物になるんじゃないのか?
「できるかもしれませんから聞いてみます。もしできればお譲りしますよ」
 横で聞いていた古泉が口をはさむ。まあハルヒの機嫌を向上させたんだから、それくらいのお礼は『機関』でしてやってもいいんじゃないのか?

「それいいわ! 古泉くん、SOS団のシンボルマークで型を作って頂戴! そうだわ、いっそのことシンボルマークのマンホールの蓋を作ればいいのよ! そうすれば知名度も滝を登って龍になるにちがいないわ!」
 そんなもん市が採用するわけがないだろうが。だいたいマンホールの蓋ってのは知らず知らずのうちに踏まれているもんだぞ。お前はSOS団のシンボルマークを足蹴にされてもいいのか。
「あら、それは踏み絵に丁度いいじゃない」
 踏み絵は踏めない人間が弾圧されたんだが、今回は踏める人間が弾圧されるってことか。
 などと言っている場合じゃないな。俺は古泉と顔を見合わせて溜息を吐いた。
 さて、市内マンホールの蓋入れ替え作戦、どうやって諦めさせればいいのかね。おい長門、ワッフルを食い続けていないで少しは何か考えてくれ。
「美味」
 ……ダメか。

 それにしても、嬉しそうに輝くハルヒの笑顔を見ているとまあいいかという気分になる。
 これだけ嬉しそうなら、明日の朝には市内のマンホールの蓋が全部SOS団のシンボルマークに変わっていても構わないさ。

「構います! 涼宮さん自身にどう説明つけるつもりですか! そこ、問題投げないでください!」
「ワッフル作ったのにやっぱり最後空気でしゅ~」


  おしまい。



調理部長氏の名前はきっと林さんだと思います。
元ネタは探偵ナイトスクープでした。