ありきたりじゃないありきたり 前編
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前編 後編
ハルヒスレ98より
370 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日: 2008/09/20(土) 00:36:07 ID:BpngFYwd
自分も何かペットが欲しいと思い、ペットショップに足を運ぶハルにゃん

しかし、この電波で書いたのは最初だけで、すぐに全然関係ない方向に脱線。

「だったら何故シャミセンを俺に押しつけたんだ。あいつを拾ったのはお前だろうが」
「な、なによ! あんただってシャミかわいがってんじゃないの。今更あたしが飼うなんて言わないわよ」
「そりゃ、今取り上げられても妹も悲しむだろうし、俺も困るけどな」
「そうだ! あたしもシャミの飼い主になればいいんじゃないの!」
「は? お前はなにを言っているんだ?」
「あたしも一緒に住めばあたしも飼い主になれるじゃないの!」
「なに言ってんだ? そんなこと出来るわけないだろうが! なんでそんな『いいこと思いついた!』って顔してるんだよ!」
「そうと決まれば早く引っ越さなくちゃね。荷物まとめてくるわ!」
「まて! 余分な部屋はないし、第一親が許すわけないだろ!」
「なに言ってんの、あんたの部屋に住むに決まってるでしょうが」
「はあ!? いや、だから親は……」
「あたしは荷物まとめてくるからあんたは今のうちに役所行ってきなさい」
「おい、役所に何の用があるっていうんだ」
「鈍いわね、婚姻届取りに行くに決まってるでしょ!」
「なんですとっ!?」

 結局俺の反論が受け入れられるわけもなく、ハルヒは俺と結婚……

 出来るわけねーだろ! 俺はまだ18になってないんだよ!

「仕方ないわね。じゃ、あんたが18になるまで待つわよ」
「って俺18で結婚決定!? しかも相手がハルヒ!? 俺の意見は?」
「なによ、嫌だって言うの?」
「いや、俺はまだ結婚とかそんなの考えたことは……」
「……あたしじゃ、嫌……?」
 ってお前それ反則だ、なんで急に上目遣いで瞳を潤ませるんだ!
「嫌じゃない、嫌ってわけじゃないが……」
「じゃ、決まり! 約束だからね!」

 そう言って100Wの笑顔になるハルヒに何か一杯食わされたような気になりながらも、そんな悪い気分じゃないことに気づいて俺は呟くしかなかった。
「……やれやれ」
 どうやら覚悟を決めなきゃならないようだな。
 まあ、それも悪くないだろ?


 けたたましくなった呼び鈴に思わず眉をしかめながら出ると、大荷物を抱えたハルヒが満面の笑みで立っていた。前回、ほぼ成り行きで結婚なんて話になってしまったのだがいまいち実感がわかない。
 本当にこいつは俺と結婚したいなんて思っているのか?

「で、何だその荷物は」
「善は急げって言うでしょ! 今日から一緒に住むわよ!」
「おい、ちょっと待て! だいたいあの話も18になってからってことになったのに何故今から一緒に住むんだ?」
「だから善は急げって言ってるじゃない!」
「意味がわからん!」
「どうせ一緒に住むことになるんだから、早いほうがいいじゃない?」
「いや落ち着け。そもそも例の話も親に何も言っていないだろう。許可が出るわけない」
「あら、もう話したわよ」
「はあ!? 俺は聞いてねーぞ!」
「そういやあんた居なかったわよね」
 そういう大事な話を当事者抜きでするな! 親も何考えてるんだ!
「……で、親は当然反対したよな?」
「あら、『いつでもいい』って言ってくれたわよ?」
「……」
 おい、親。いったい何を考えている。何処の世界に高校生の息子がよその女の子と同じ家に住むのを了承する親がいるんだ。
「とにかくそういうわけだから、今日からよろしく!」
 よろしくって言われても……。だいたいこの家の何処に住む気だよ。
「だから、あんたの部屋でしょうが」
「あー、確かにこの間もそう言ってた……ってちょっと待て!」
「なによ」
「やっぱそれ無理! 絶対無理!」
「なんで? あ、きっとヤラシイ本とか隠してるんでしょ」
「いや、それは簡単には見つから……じゃなくて、そういう問題じゃなくてだな、」
「いいから早く家に上げなさいよ。いつまで玄関に立たせておくつもり?」
 俺のセリフを遮るあたりも何処まで行ってもハルヒなんだが。
「あ、ハルにゃんだ~!」
 ってややこしいことに妹が玄関まで出てきてしまった。
「妹ちゃん! 今日から一緒に住むからよろしくね!」
「ほんと!? やったあ、ハルにゃんがお姉ちゃんになるんだ!」
 単純な解釈で喜ぶ妹とともに家に上がりこむハルヒ。
「キョン、荷物持ちなさい!」
 俺に荷物を押しつけると、さっさと階段を上がっていってしまった……って、やっぱり入るのは俺の部屋かよ!
 溜息を一つ吐いて、俺はハルヒの後を追った。
 しかし、本気で一緒に暮らすつもりなのか? 色々問題ありすぎるだろ、どう考えても。


 荷物を抱えてハルヒの後を追いながらも、俺は違和感を覚えていた。
 そもそも、いきなり結婚を言い出したことがおかしい。ハルヒは別に俺と付き合っちゃいない。何故そんな相手と結婚するなんて言い出す?
 そして親の反応だ。ハルヒの両親に関しては知らないので何も言えないが、うちの親は世間一般の親からそうずれちゃいないはずだ。俺の成績が悪ければ予備校に放り込みたくてうずうずするような親が、まだ高校生の年齢で結婚します、その前から一緒に暮らします、と言われてはいどうぞなんて言うわけがない。
 最後に俺自身だ。最初に述べたように、俺とハルヒは付き合っているわけじゃない。そりゃクラスメイトで部活と言っていいのか、とにかく放課後の活動も一緒で共有している時間は長いかもしれないが、それ以上でもそれ以下でもない。そのハルヒに「結婚する」と言われて、驚きつつもどこかで納得してしまっている。
 なんで俺はあっさりとこの事実を受け入れたんだ?

 後半2つの疑問はすでに答えが出ている。つまり、ハルヒだ。
 絶対こいつが何かしたに違いない。
 だが、それでも最初の疑問の答えにはならない。


 部屋に入ると、すでに妹と二人でシャミセンと遊んでいた。そう言えばことの始まりはペットを飼うって話だったんだよな。
「おい、荷物ここに置くぞ」
「あ、うん、ありがと。やっぱシャミいいわよねー、可愛いわ」
「でもシャミはキョンくんが一番好きなんだよー」
「そりゃお前が構い過ぎるからだろ」
 そんな他愛もない会話をしながら、ハルヒの横顔を改めて見る。普段の強気を宿らせた目は、今は動物を前にしているせいか和らいでおり、そのまま眺めているとやはり最初の疑問なんてどうでも良くなってくる。ハルヒがここにいたいって言うならそれでいいじゃないか。
 いやいや待て、流されるな。やっぱりおかしいぞ、なんでハルヒを見ているとこんな気分になるんだよ。俺にどんな魔法をかけやがったんだ、ハルヒ。

 やがて二人に構われてうんざりした表情のシャミセンが部屋から逃げ出し、妹が後を追って部屋から出て行った。
「シャミー、どこいくのー?」
 やれやれ、無邪気なもんだ。小学校6年生としてはどうかとも思うね。
「あーあ、いっちゃった」
 言葉ほどがっかりしていないような口調でそう言うと、ハルヒはようやく俺と視線を合わせた。
「さてと、今日からよろしくね!」
「あ、ああ」
 屈託のない笑顔はまたもや俺の中の、疑問の重要性を下げてしまう。
 そんな疑問を提示して今の状況を壊すくらいなら、このまま俺の部屋にハルヒを置いておきたい……なんて、俺は本当に何を考えているんだ?
 俺は首を振ってその考えを払った。くそ、無自覚とはいえその能力で人の心に入り込んでくるんじゃねえ。

「どうしたのよ」
 俺が一人で考え込んでいると、ハルヒが顔を覗き込んできた。だから顔が近いんだよ、お前は!
「あのな」
「なあに?」
「なんで突然結婚するとか言い出したんだよ。お前は本当に俺と結婚したいのか?」

 何とか流されそうになる気持ちをつなぎ止めて、その疑問をぶつけてみると……。

 ハルヒは顔どころか耳も首筋も、文字通り真っ赤になってしまったのだった。


「べ、べつにっ、あたしは……ほら、だってあんたが最近雑用としてなってないから! あんたのことを生活から見張ってもう一度雑用根性をたたき直すのよ!」
 なんだそれは。雑用根性て。最初からそんなもん持ち合わせちゃいないし、これから身につけるつもりもない。そこ、最初から負けてるんじゃないかとか言うなよ? それは、まあ、アレだ。アレって何だ。
 ってツッコミどころはそこじゃないな。
「お前は最初シャミセンがどうこう言ってたじゃねえか。シャミの飼い主になるためじゃなかったのかよ」
 もちろんそれも理由としてはどうかと思う。だいたい最初はペットショップに行くと言っていたくらいだから、シャミセンを持って帰ることを遠慮してくれるなら、ペットショップででも選んだことだろう。あるいは、以前長門が教えてくれた猫のたまり場に行ってもいい。
「えっ、あ、そ、そうよ。それはもちろんそうだけど、どうせ飼い主になれるならあんたの面倒も一緒に見ればいいって思ったのよ!」
 俺はお前のペット代わりか。
「えっ? そういうわけじゃないけど……」
 まだトマトみたいな顔をしているハルヒは、そう言うとぷいっと横を向いてしまった。
「だけどな、ハルヒ」
 そんな理由で何を納得しろって言うんだ。
「どっちにしたって結婚って話になるような理由じゃないだろうが」
「う……そんなこと、ない……と思う……」
 こんな自信なさげなハルヒもめずらしい。と思ったら、再び潤んだ目で上目遣いという攻撃を受けた! 4800のダメージ!
「でも、あんたは、嫌じゃないって言ったわよね」
 だーかーらー、その顔でそんなセリフ言うのは反則だろ! どうせならいつもの調子で命令してくれ、その方が俺も遠慮なく反論できるってのに。
「そりゃ、嫌ではないけどな」
 確かに嫌だと感じていない、それは先ほどから思っていることだ。例えそれがハルヒにコントロールされている感情だとしても。
「でも、納得はできん」
 これもまた本音。

 ハルヒは戸惑ったような困ったような表情で俺を見ていたが、やがてぽつりと呟いた。

「……あたしがあんたといたいから、って理由じゃダメ?」

 なるほど、ハルヒが俺といたいからか、それなら納得出来る…………って?

 なんだって!?

 いや、待て。確かにそういう理由なら納得は出来る。そりゃ一緒にいたいと思う相手なら、それが異性なら結婚したいと思ってもおかしくはない。だけど、今までそんなそぶりを見せたことなんかあったか? どう考えてもパシリとか雑用とか財布くらいにしか扱われていないような気がするんだが。
 ダメ? と聞かれても、今の俺に否はない。今の俺は、素直に認めよう、ハルヒに惹かれているのは間違いない。でなければこんな無茶な要求を諾々と呑み続けているわけはないのだ。
 だが、それは俺の意志じゃないはずだ。だったらそれに流されたくはない。
「ハルヒ……俺は……」
 何とか言葉を繋ごうとするが、出てきやがらない。俺を見つめるハルヒの瞳は少し潤んでいて、吸い込まれそうになる。
 否定しろ。ハルヒの言った理由は納得できるもんじゃないって言え。
「……お前がそうしたいなら、それでいいさ」

 そう言った俺に安心したのか、ホッとしたような笑顔を向けるハルヒを見ていると────

 敵うわけないんだ。こいつの能力に。
 どうやったって、贖えない。


 晩飯の間もハルヒがそこに居ることに、俺の両親は何の疑問も抱いていないようだった。俺とハルヒの成績を引き合いに出して「よろしくね」なんて言っている母親を見ていると頭が痛くなってくる。ハルヒはハルヒで「こちらこそよろしくお願いします」なんて、お前こそどっかから借りてきた猫なんじゃないのかと言いたくなる態度で応じている。それどころじゃないだろ、とツッコミをいれても無駄なのは分かり切っているので余分なエネルギーは使わない主義の俺は黙って箸を動かしていた。だいたい今の現状を受け入れてしまっている以上、これから先に問題が待ちかまえているのが明らかであって、いちいち親の態度なんか気にしちゃいられない。
 ハルヒは俺の部屋に転がり込んできた。
 さすがに寝具は客用布団でも出せばいいだろうが、それにしても同じ部屋で寝るのか?
 いや、でも結婚が前提ってことは、結婚ってやっぱりそういうことをするわけで……
 って落ち着け、だいたいハルヒがそんなことまで考えて結婚を言い出してるわけじゃないだろ!
 しかしこれはこれでオイシイとも言えないか? そうなったらなったで別に問題は……
「あんたなに百面相してるのよ」
「うわっ! は、ハルヒ?」
 いつの間にか脳内会議を広げていた俺をハルヒが覗き込んでいた。突然目の前に現れるな、びっくりするじゃないか。いや、それより俺は何を考えていたんだ、色々と落ち着け。
「いつまで空っぽのお茶碗持ってる気? 片付けるわよ!」
「ああ、すまん……」
 考えごとをしながら食べる飯ってのはいつの間にか終わってるもんで、俺はいったい何を口に入れたんだかさっぱり解らないまま箸を置く。お袋よ、すまん。
 嬉しそうに妹と並んで食器を洗っている後ろ姿を眺めていると、また「こういうのも悪くないな」という思考が入り込んできて、慌てて首を振った。ダメだ、また流されそうになっている。
 俺自身、流された方が楽だなんてことは解っている。このままハルヒと一緒に暮らして、一般的に問題になる部分、例えば学校にどう届けるか、なんてことはハルヒの能力で排除されてしまうに違いない。ハルヒを取り巻く謎のプロフィールを持つ連中も、それがハルヒの望みならば邪魔をすることはないだろう。
 しかし、それでいいのか?
 この状況は、つまりハルヒが作り出した世界だと言っていい。ハルヒが望んだから今があり、もし飽きたらきっと消えてしまう。
 今、ハルヒに一緒にいたいなんて言われて素直に嬉しいと思っている俺の感情さえ、砂上の楼閣でしかない。

 だいたい、ハルヒが俺といたいなんて言い出したこと自体おかしいじゃないか。あいつは「恋愛は精神病」なんて言っていた。だから俺といたいんだとしたら、それは恋愛とは別の感情なんじゃないのか? あいつにとって俺は中学から考えると初めて出来た友人だと言っていいだろう。少なくとも会話が成立したのは俺が最初で間違いない。だが、それで好きになるほどハルヒは単純ではないだろう。そんな物にかまけている暇はないんじゃなかったのか?

 その疑問に対して答えられるのはハルヒだけであり、結局俺はハルヒからその答えを聞くことになるのであった。


 その晩にあったことは俺の都合上省略して翌日……え? 何だって? そこを隠しちゃダメだろうって?
 ……正直に言って、期待されるようなことは何もないぞ? まあそこまで言うなら仕方がない、昨日の夜のことから話そうか。

 母親が、どこからか引っ張り出してきた布団をなんの疑問も持っていないといった具合に俺の部屋に運び込んできたり、俺の前に風呂に入っていたハルヒが上がってきたのを妙に直視できなかったりと落ち着かない時間を過ごした後のことだ。
 さすがに夜も更けてきたので、そろそろ寝ようと思うのだが、同じ部屋にハルヒが居ると思うと全然落ち着かない。
「なあ、ハルヒ」
「なによ」
「本当にここで寝るのか? 妹の部屋に行った方がいいんじゃないのか?」
「あたしを追い出す気? ふうん、いい度胸じゃないの」
 俺がこういって怒りを交えた笑顔を返してくるあたりは、まったくいつものハルヒなんだけどな。
「いや、追い出すとかそう言う問題じゃなくて、やっぱりまずいだろ」
「何がまずいのよ」
「あのな」
 こいつは本当に解っていないのか、解っていないフリをしているのか。どう考えたって、いきなり男の部屋で一夜を明かすって大問題だろう。だいたい、今はまだ理性を保ってはいるが、正直ハルヒのパジャマ姿が気になって仕方がない。
「俺は一応男なんだが」
「そんなこと知ってるわよ」
 しれっと言うな。
「お前は女だよな」
「あたしが男に見えるっていうの!?」
「そう言う意味じゃなくてだな」
「じゃあ何よ」
 こいつは俺をからかってるのか? それとも、本気で解らないとか言うんじゃないだろうな?
「……もういい、寝る」
 議論するだけ無駄な気がしてきた。もう何も考えずに寝よう。それが一番だ。現実逃避とか言うな。
「なによそれ」
「うるさい、お前ももう寝ろ」
「命令してるんじゃないわよ」
 そう言いつつ、ハルヒも自分の布団に潜り込んだ。視界からハルヒがほぼ消えることで、俺も少し落ち着く。電気を消して目を閉じれば大丈夫、眠れそうだ。
 なんだかんだ言っていつもと違うバタバタした1日だったのだ、疲れていて当たり前だ。睡魔は俺を徐々に支配していった…………。

「ねえ、キョン」

 って、せっかく上手い具合に眠れそうだったのに、なんでお前は話しかけてくるんだ!
「……」
 俺はもう眠ってるからな、返事して会話を始めりゃ完全に覚醒して寝付けなくなるかもしれない。
「ちょっとキョンってば!」
 起こす気満々かよ!
「……なんだよ、俺は寝たいんだが」
 仕方がないので返事をする。しかし、せっかく人が会話してやる気になったというのに、ハルヒはしばらくの間黙り込んでいた。おい、何か話すことあるんじゃないのか?
「あのさ、キョンは嫌だった?」
「何が」
「一緒に暮らすこと」
 そう言うハルヒの声はいつもの覇気が感じられない。これは、そうだ、居なくなった朝倉を探しに行ったとき、自分が変わったことをするきっかけにの話を俺にしたときと同じだ。珍しく弱気な、少し不安が混じった声。
 しかし俺はなんて答えたらいいのか解らず、何も口に出来なかった。嫌ではない。だが、こんな形じゃやっぱり嫌だ。こんな、ハルヒの能力で無理にねじ曲げた世界で一緒に暮らすなんて冗談じゃない。俺は俺の意志で決定したいんだよ。ハルヒのことも、今後のことも。
「あたしはさ、なんでだかわかんないけど、あんたも同じだと思ってた」
「なにがだ」
「あんたも、世界はつまんなくてうんざりしてるって。だから、あたしが何か面白いことを探しに行けば、あんたも着いてきてくれるに違いないって思ってた」
 あんたは、つまんない世界にうんざりしてたんじゃないの?
 いつかハルヒと2人きりの閉鎖空間で問われた言葉。あのときも今も、ハルヒは俺が何をしたいかってことなんかとっくに承知だったわけだ。だから、あのとき俺はこう答えた。「思ってたとも」と。
「中学のときからつまんない世界を変えてやるって1人で頑張ってたけど、ちっとも変わらなかった。だけど、高校に入ってから、あたしは同じことをするにしても1人より2人の方が楽しいんだって知った」
「……5人じゃないのか?」
「そうね、今ではそう思ってるわ」
 あのときの閉鎖空間で、ハルヒは長門や朝比奈さんや古泉をも拒絶した。SOS団も、自分が面白い目に遭ってるからもういい、とまで言ってのけたのだ。あのときと今では、SOS団に対する思い入れはまったく違う物になってると感じていたが、今のハルヒのセリフはそんな俺の考えを裏付けるものだった。
「そう、5人で何かするのは凄く楽しいわ。時々鶴屋さんや妹ちゃんも一緒にね。気が付いたらあたしは世界を変えてやろうと思ってたのに、そんなことしなくてもいいほど毎日が楽しくなってたの」
 何かそこにもう2人ほど加えてやりたくならなくもないが、まあいいか。
「世界は変わってないのに、あたしの世界は大きく変わった。変えたのは────」
 目が慣れてきた暗がりのなかで、ハルヒが起きあがって俺を見つめているのがはっきり解った。

「──あんたよ、キョン」

 それは予想出来たはずのセリフなのだが、俺は答えなんか用意できていなかった。
 用意できなかった俺が言ったセリフは、口から出た瞬間に取り消したくなるほどひどいもんだった。

「恋愛は精神病じゃなかったのか?」
 ハルヒは怒ると思ったのだが、意外にも冷静にその言葉を受け止めたようだ。その理由は簡単明瞭。
「そうよ」
 ハルヒ自身もそう思っているからだ。
「恋愛なんて気の迷いよ。だからあたしは通り一遍の恋愛なんてする気はないの」
「どういうことだ?」
「それでも一緒にいたい相手がいるなら、恋愛なんてもんより家族になった方が手っ取り早いじゃないの」

 なんだ? ハルヒが恋愛というプロセスを重要視していないのは何となくわかる。だけど、どういうワケか、いや、今説明してくれたんだが、とにかくハルヒなりの理由で俺と一緒に居たいと思った。
 それで、一気に結婚ってことになってしまった……ってことでいいのか?

 おいおい、ハルヒらしいっちゃらしいが、やっぱり色々すっ飛ばし過ぎだと思うぞ。