夕刻、廊下にて
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微エロ注意

 さりげなく何気なく俺はハルヒに視線を向けた。しかし隣を歩くハルヒはまだ明け切らない梅雨空のような不機嫌な顔を隠そうともせずに黙って前を向いている。凄くきれいなその顔はいつも見ているのにどきどきするのはなぜだろう。世界中探しても、これほど美しい顔は無いと思った。
 そうだな、どうせなら笑顔が見たい。
「ハルヒ」
 ちらりとこちらを向いたハルヒに、俺は顔を近付けた。
「っ! なっ何するのよ!」
 反射的に俺から離れるハルヒの顔は、さっきまでの不機嫌面はどこへやら、今度は失敗をやらかした朝比奈さんばりに真っ赤になりながら慌てた表情へと変化した。おい、そこまで焦ることもないだろうが。
「ううううるさい!」
 そう叫んで走り出そうとするハルヒの腕を捕まえてそのまま勢いで抱き寄せる。
「なあ、何をそんなに焦ってるんだ?」
「なに、って、べつに……」
 笑顔が見たいと思ったのに真っ赤になっただけで俯いてしまったハルヒは、それでも抵抗せずに俺の腕の中に収まっている。さらりと髪の毛が流れてあらわになった白い首筋に残る赤い跡に、先ほどまでの行為をつい思い出してしまい思わず笑みがこぼれた。ハルヒがこんな態度になるのも無理はないか。
 そういう俺にも照れがないわけではない。
 2人きりの部室。思いの丈は言葉だけでは伝えられなくて、不器用に身体でぶつけた俺を受け入れたハルヒ。白い肌。俺を呼ぶ掠れた声。健気にも痛みに耐える表情。
 綺麗だ、と思った。
 愛おしくて、あまりにも愛おしくて、大事にしたいと思う気持ちと滅茶苦茶にしてしまいたいという衝動が俺の中でせめぎ合った。
 その結果────少々意地悪でもあったかもしれない、と自分でも思う。

 そんな海馬の一番新しい記憶をなぞりつつ、いつもの傍若無人ぶりが逃げ出してしまったかのようなハルヒの態度を見ているとまた虐めたくなってしまう。
「なあ、どうしてそんなに赤くなってるのか教えてくれ」
 そういって額に軽く唇を寄せ、あからさまにビクッと震えた身体を強く抱きしめた。
「さっきのこと、思い出してるのか?」
「ち、違うわよっ」
「俺は思い出してるけどな」
「な、何言ってんのよバカキョン」
 反論する声に力が込められていないのもいつものハルヒではない。額から形の良い耳に唇を移すと、ハルヒは可愛らしい声をあげた。
「やっ……ダメっ! キョン、誰かに見られたら……」
「誰もいないぜ」
 とっくに下校時刻が過ぎた部室棟の廊下には人気がなく、窓から入る夕日が俺とハルヒの影を廊下に投影するだけだ。それでも誰か来るかも、と心配するハルヒに俺は囁いた。
「なんならもう一回部室に戻るか?」
「……エロキョン」
 そう呟いた唇に自分の唇を重ねると、ハルヒは自分から舌を絡めてくる。
「お前だってエロハルヒだろ」
 唇を離してそう言った俺を睨み付けるハルヒの顔は、やっぱり世界中で一番綺麗だった。


  おしまい。


このSSは、真宮如人様主催のチャットでの「さしすせそ作文」から書いた話で、冒頭の7文は自分を含めたチャット参加者で書いた物です。ありがとうございました。