Sunday, Your Birthday
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夫婦設定注意

 日曜日は早起きすることもなく、すっかり明るくなった朝日を浴びながら、普段はうるさい目覚まし時計も邪魔しないでいてくれるという穏やかな朝で始まる。
 いつもならハルヒが先に起きて、俺が身支度をしている間に朝食を用意してくれる訳だが、日曜に限っては俺が用意をすることになっているのも、結婚以来……いや、結婚以前の同棲以来の習慣となっていた。
 しかしやはりハルヒは俺に任せるのが不安なのか、それとも香りに刺激されるのか、コーヒーが入る頃には起きてくるのが常なのだが、今日はどうしたことか布団に潜り込んだままいつまでたっても起きてこない。
「どうした、ハルヒ。具合でも悪いのか?」
 起きてこないハルヒを心配して寝室を覗くが、まだ布団の中で俺に背を向けたままだ。
「別に」
 と言う声もいつもより低く不機嫌そうで、これで具合が悪いのでなければ本当に不機嫌だと言うことになる。
「朝飯はもうできるけど、食欲ないのか?」
 健啖家のハルヒが食欲ないなんてよっぽどのことで、もしここでそうだと言われたら救急車でも呼んだ方がいいんじゃないのかという気にもなるのだが、果たしてハルヒは本当に食べたくないと言いやがった。
「おい、マジで具合が悪いんじゃないのか? 病院行くか?」
「どこも悪くないって言ってるでしょ」
 飯を食わないとまで言っておいて具合が悪いのでなければ、このモーニング・ブルーの理由なんか解りっこない。いったいどうしたって言うんだよ。
「うるさい! いいから放っておいて!」
 とりつく島もないハルヒに、俺はどうすることも出来やしない。
 やれやれ、どうしたもんかね、と溜息をついて何気なく視線をそらした俺の目に、────どうしてそこを見たのかって理由はまったくないのだが────カレンダーが飛び込んできた。
 ああ、今日の日付は……。
 …………。

 ああああああ!!??
 やっちまった!!

 カレンダーは、今日が日曜日であるとともに、ハルヒにとって重要な日、つまりハルヒの誕生日であることを告げていた。
 しまった、ここんとこ忙しくてすっかり頭から抜け落ちていた!
 毎年なら朝一どころか日付が変わった直後に「おめでとう」を言っていたのに、今日は俺から何も言っていないわけで、ハルヒの不機嫌の理由は間違いなくそこだ。
 俺がハルヒの誕生日を忘れていたこと、それに怒っているわけだ。

「あのー、ハルヒ?」
「……」
 返事はない。ただの屍のよう……なんて言ってる場合じゃない。
「その、すまん」
「なにが」
 ようやくもらえた返事は、部屋の中を冷凍庫に変えたんじゃないかと思うほど冷たい声だった。
「いや、その、誕生日、だよな」
「……今頃思い出したの?」
「すまん」
 俺の謝罪はまだ受け入れられないらしく、背を向けたままのハルヒに俺はどう言葉を選べばいいのかも解らない。
「その、仕事が忙しくて、すっかり忘れてたんだ、本当にすまん」
「仕事を言い訳にするなんて最低」
「……だよな」
 いや、言い訳というか実際それが理由なんだが、ハルヒにしてみれば納得できる理由じゃないだろう。
 と言うより、理由なんか問題じゃないよな。言い訳すんなってことか。
「本当にすまん。埋め合わせは何でもするから、とにかく起きて一緒に飯食ってくれよ、頼む」
 この埋め合わせで向こう3ヶ月小遣いなしってことになってもこの際甘んじるしかないだろう。
 全面的に俺が悪いわけで、どうとでも謝るから機嫌を直してもらいたい物だ。
 ハルヒはやはりお腹が空いていたのか、むくりと起きあがり、ようやく俺に視線を向けた。
 ここまで怒った顔を見るのも久しぶりだな。
「なあ、ハルヒ」
「なによ」
「怒った顔も可愛いな」
「なっ……」
 俺の一言で一瞬で表情を怒りから照れに変化させるのを見て、やっぱり可愛いと思う俺は相当重傷だと思う。
 そして、
「アホ────!!!!」
 の声とともに飛んできた鉄拳を受けつつも、ああやっぱりハルヒに惚れてるんだなと実感している俺はもう手遅れなのかもしれない。


 その後、ハルヒの機嫌を直すために、あちこちの店を巡り、そのたびに増える買い物袋に青ざめている男の姿が見られたそうだ。

 ともあれ、誕生日おめでとう、ハルヒ。

 ────Celebration!


  おしまい。