怪談:最期の電話
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親父書きさんのこの話を読んで思い出した話をネタとして書いてみる。
親父書きさんありがとうございます。

「俺自身の経験じゃないが、そんな話を俺も聞いたことがあるな」
「FOFなら用はないわ」
「なんだ、FOFってのは」
「Friend of firiend. 『友達の友達が~』で始まる信憑性のない話、いわゆる都市伝説ってやつね」
「確かに俺自身の話じゃないが、実際に経験した人間から聞いた話だ」
「誰よ」
「いとこのねーちゃんだ……ってなんでいきなりジト目になる?」
「あんたのイタイ初恋話は要らないわ」
「俺がいつそんな話をしたんだ?」
「妹ちゃんに聞いたわよ」
「ぐっ……(なんで妹が知ってるんだ)、とにかく、その話とは関係ない、別人だ」
「ふうん、まあいいわ、話してみなさい」

「ねーちゃんの友達が数年前に亡くなったらしい。そのときの話なんだがな」
「そのいとこって今何歳?」
「何歳だっけ? 俺より10歳くらい年上だったと思う」
「じゃあ、友達ってのも若くして亡くなったわけね」
「そういうことになるな。で、その友達ってのはやっぱりガンだったらしいけど、自分の病気の事を親しい友人にも話さずに亡くなったそうだ。当然家族は知っていたがな」
「弱音を吐きたくなかったんでしょうね」
「ねーちゃんも、その友達が病気で入院しているのは知っていたが、そんな大事だとは聞いてなかったし、遠くの病院だったから『退院したら遊んでね』という言葉を真に受けて、見舞いには行かなかった。自分も忙しい時期だったらしい」
「忙しいなんて言い訳だわ。見舞いに行きたいと思えば行けたはずよ」
「病気の人間相手だ、言外に来ないで欲しいって意を酌んだんだろ」
「まあ、そうかもしれないけどさ」
「それでだ、しばらくして、その友達からねーちゃんの携帯に電話があったんだ。ねーちゃんは出ようと思ったけど、2コールほどで切れてしまった。慌ててかけ返したけど『電波の届かないところにおられるか電源が入っていないため』なんていうアナウンスが流れるのみだった。ねーちゃんはそのときは、電話したときに充電が切れたんだろうくらいに考えていた。しばらくしたらまたかかってくるさ、くらいにな」
「話の流れからすると、かかってこなかったわけね」
「ああ、その友達からは2度とかかってこなかった。翌日電話をかけてきたのは、その友達の母親だった。涙声で、前日にその友達が亡くなったと聞かされたんだ」
「前日って、電話があった日よね」
「そうだ。ねーちゃんもまさかと思って、何時頃か聞いたらしい。そうしたら、まさにその電話が鳴った頃に亡くなったって話だ」
「電話を片手に亡くなったってこと?」
「いや、しばらくは家族がごたつくから聞くのは遠慮したらしいが、落ち着いた頃に思い切って聞いたらしい。ちょうど友達が亡くなったころに、友達の携帯から電話があった、誰かが電話したのかって」
「それで?」
「その友達は、亡くなる数日前から昏睡状態で電話なんか出来る状態じゃなかったそうだ。携帯は誰も使わないから放置されていて、充電すら切れていた状態だったらしい」
「あれ? でも……」
「ねーちゃんの着信履歴は、間違いなくその充電が切れている携帯の番号だった、って言ってた」
「じゃあ、どうしてその電話がかかったのかわからないわけね」
「携帯会社に問い合わせて発信履歴なんかを見せて貰えばはっきりしたかもしれない。でも、誰もそれをしないまま数年が過ぎたからな。真相は誰もわからない。だけどな……」
「あたしは、その友達が電話したんだと思う」
「ねーちゃんもそう思っている。それで、今でも悩んでいるんだ。友達は単にお別れを言いたかったのか、一度も見舞いに行かなかった自分を恨んで、恨み言を言いたかったんじゃないか、友達は自分を許してくれていないんじゃないかって」
「手紙とちがって、電話の着信だけじゃ意図がわからないものね」
「すでに機種変したらしいが、もとの携帯はまだ手元にあるそうだ。その着信履歴もまだ残っている、というか心情的に消せないらしい」

「なるほどね。で、あんたはどう思うの?」
「ねーちゃんとその友達の関係をよく知っているわけじゃないけどさ、俺だったらと考えたことはある」
「じれったいわね。だから、あんただったらどうなのよ」
「大事な友人なら、やっぱり声が聞きたかったんじゃないかと思う。恨み言とかじゃなくてさ、あのときはあんなことして楽しかったなとか、そんな他愛もない話がきっと凄く大切な思い出だと思うんだ。その思い出を共有してくれる人と、話をしたかったんじゃないかな」
「思い出を共有……」
「ああ、きっと誰だって独りで逝くのは寂しいさ。忘れられないかって不安だってあるだろ。そのときに真っ先に思い浮かべる相手は、そういう相手だと思うんだ。家族もそうだろうけど、家族はきっとそのとき傍にいた。だから、きっとねーちゃんに電話したかったんじゃないのか」
「実際に電話したのかしらね」
「だからそれはわからん。放置されていた携帯の電池がギリギリ残っていたから、最期の気力でかけたのかもしれないし(それにしては携帯は引き出しにしまってあったらしいが)、本当に話したいという思いが何らかの超常現象的な力を発揮したのかもしれん」
「そうね、あたしだったら例え手足が使えなくなってても、しゃべることが出来なくても電話して言いたいことは全部言うわ」
「お前なら(本当の意味で)できそうだな」
「当然でしょ! ……で、あんたは?」
「俺? そういうときに電話するかどうかなんて、そのときになってみなきゃわからん。誰が傍にいて、誰と話せないのが心残りなんてのもわからんからな。ただ、電話の相手がお前じゃないのは確かだ」
「なんでよ! あたしじゃなかったら誰がいるって言うの!?」

「そのときお前は必ず俺の傍にいるはずだからだ。そうだろ?」
「それはダメよ。……あたしより先に逝くなんて絶対許さないないんだから」


  適当におしまい。



友人の実話を元にしております。
実際のところどうなのか、一番の可能性は友人が俺を担いでいるってことなんですがwww