同じ空の、同じ月
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ハルヒスレ120より
951 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/30(月) 01:19:29 ID:hBZqvaD/
寂しい夜はキョンに電話して、夜を明かすハルヒ

952 :名無しさん@お腹いっぱい。:2009/11/30(月) 01:21:32 ID:JHaXaPbB
距離は離れていても同じ空の同じ月を眺めながらの電話もいいものだ
 ……という電波から書くつもりが違う話になったorz

親父書きさんが続きっぽいのを書いて下さいました。毎度言っている気がするが、ああいう会話を書けるのは凄いな。脱帽ものです。文末にリンク張らせて頂いてます。

 気がつけば、大学生という身分になって初めての年越しなんてイベントを迎える時期になっていた。キリストの生誕を祝うなんて名目だけの気の早いディスプレイがあちらこちらに飾られ、町全体が浮かれているというのに俺の気分は今の空模様と同じく雲が広がっていた。天気予報は下り坂、もうすぐ雨が降ってくるのだろう。
 楽しい時間があっという間に過ぎるというのは事実で、まるで北高からの坂をノーブレーキで駆け下りるように、俺たちの3年間はあっという間に過ぎてしまった。ハルヒと俺の進路が別々になるのは成績表を見れば明らかで、散々渋ったあげくにハルヒは遠方の大学へ、俺は地元の私立大へと進学した。
 結局最後まで謎だったハルヒの能力は、高校卒業時にはほぼ使われなくなったまま今に至る。長門をしても、その力が消えたのか、それとも単に使われなくなっただけなのかは解らないらしい。だから当たり前なのだが、長門と古泉はハルヒと同じ大学へ進学し、朝比奈さんは俺たちから見れば未来へと帰ってしまい、俺は一人地元に残されるという形になったわけだ。

『いい? SOS団は解散するわけじゃないんだからね!』
 卒業式の後、部室で「卒業記念パーティー」等と銘打った最後の一騒ぎのそのまた最後にハルヒはそう言った。
『みくるちゃんもなかなか会えなくなっちゃったし、キョンも一人でこっちに残るからってサボってちゃダメよ! SOS団は年中無休で活動してるんだから!』
 年中無休でなんの活動をしているのか最後までいまいち謎だったのだが、それはもう今更だ。卒業までハルヒはハルヒのままであり、そのセリフも全く予想できるものだった。
『あんたがサボってないかどうか、抜き打ちでチェックしてあげるわよ』
 何故か俺と目を合わさないままの言葉にどういう意味があるのかそのときは解らなかったが、なんのことはない。ハルヒは「チェックする」という名目で頻繁に電話を寄越してくるのだった。

 高校時代、用件を一方的に告げるだけ告げて切っていた電話とは大違いの、たいした用事もないのに長時間話すという電話は、最近はあまりかかってこない。
 その理由はたぶん俺にあるのだろう。
 頻繁にかかってきては一晩中しゃべっているのだから仕方がないのだが、少々体調を崩したのだ。今思えば不器用に心配しているだろうハルヒの「自己管理がなってない!」という言葉につい、お前が毎日電話してくるおかげで寝不足なんだと言ってしまったことは後悔している。
 そろそろ俺から電話した方がいいのかね、だがなんだか気まずいものを感じてしまってかけづらい。そう思いながら携帯を弄んでいると、着信を告げる音楽が流れ出した。
 なんとなく誰からか解るような気がして、ディスプレイを確認して苦笑する。以前にもこんなことがあったな────

『あんた、もう大丈夫なの?』
 もしもし、も言わないのは相変わらずだ。久しぶりのハルヒの声に、胸にのしかかっていた重い石が取り除かれるのを感じる。
「風邪をひいたのは1ヶ月以上前だぜ。さすがにもう治ってるさ」
 言いながら、頬が緩むのを禁じ得ない。電話で良かった、直接会ってたら「あんた何をニヤニヤしてるのよ、気持ち悪い」なんて言われかねないからな。
『そう。ならいいんだけど』
 ぶっきらぼうにそう言って言葉を切る。視線をあさっての方に向けて怒った顔を作っている様子が脳裏に浮かび、俺は密かに溜息をついた。
「心配かけたようだな」
『別にそう言うわけじゃないけど』
「そうかい」
『……』
 しばしの沈黙。何かを言おうとしているのか、言うことが思いつかないのか、と思っていたらいきなり全然関係ないことを言い出した。
『月が綺麗だわ』
「そりゃ残念だ。あいにくこっちは曇ってるんでな」
『見えないの?』
「月どころか、今にも雨が降り出しそう……」
 言いかけてもう一度空を見上げた俺は目を疑った。
 先ほどまで雲に覆われていたはずの空はすっかり晴れ渡り、澄んだ空に明るい月が浮かんでいた。
「……だったんだが、どうやら晴れてきたらしいな」
 天気予報が間違っていたのか、それともハルヒの能力が何らかの形で復活したのか、考えるのはよしておこうか。
『綺麗でしょ』
 得意げな声で言われた言葉に、何故かハルヒの笑顔を思い浮かべながら俺は言った。
「ああ、すごく綺麗だ」

 今夜は久々に寝不足になりそうだと言うのに、俺の心は空と同じように晴れていた。


  おしまい。orz

親父書きさんによる続き↓
白みかける空
ありがとうございました。