北高2年5組の謎 中編(オリキャラ注意)
中編 | 編集

注:途中までオリキャラ視点で話が進みます。
前編 中編 後編

 3.本人に直撃!

 こうなったら! 本人に直撃インタビューよ! でも、さすがに涼宮さんに聞くのはちょっと怖い……。キョンくんに、座席の謎だけなら聞けるかな?
 よし、挑戦!

 今は昼休みだから、いつもの通り涼宮さんはいない。キョンくんは、谷口くん、国木田くんと一緒にお弁当を食べている。聞くなら今よ!

 ― キョンくん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……。
「何だ?」
 谷口くんと国木田くんも、箸を止めてわたしを見る。何か緊張しちゃうじゃない。
 ― キョンくんと涼宮さん、何回席替えをしても同じ席なのは何でかな?
 なんか、単刀直入に聞くのが慣れてきたわね。キョンくんはわたしの質問を聞くと、苦虫を噛み潰したような顔になった。
「俺が知るわけないだろ」
 あれれ。何で不機嫌になっちゃったんだろ。
「言われて見ればそうだよな。何でお前らずっとこの席なんだ?」
 谷口くんも今まで気がつかなかったんだ。ふと見ると、教室に残っている人たちがみんなこっちを見ている。みんな疑問だったのかな? 答えを期待しているのよね。
「細工をする余地はないよね。この席だと、順番によってはくじを引くのが最後になるし」
 国木田くんも首をかしげている。

 考えれば考えるほど不思議よね。
 そう言えば、涼宮さんって不思議を求めているんだっけ。この事実に気がついているのかしら?
「だから、俺にはわからんと言っている」
 キョンくんは眉間に皺を寄せたまま、そう繰り返している。
 そっか、キョンくんにも解らないのか。そう考えてると、小柄な女の子がわたしの隣に立った。

「長門?」
 キョンくんが驚いて言った。わたしもびっくりした。
 他のクラスの人が堂々と入ってくるなんてないし、長門さんが体育の着替え以外でここに来ることもなかったはず。
 みんなびっくりしていることなんか全く気にせずに、長門さんは感情のないような声で言った。
「この事実を涼宮ハルヒが認識することは、危険」
 え……何を言っているの?
「おい、長門! こんなところで……」
 すごく焦った顔で何か言いかけたキョンくんを、長門さんは遮った。
「この事実を知る該当人物全員の記憶を削除し、再度情報操作を行う」
 何を言っているのかさっぱりわからない。記憶を削除? 情報操作? 何?
「……情報操作はお前がやってたのか?」
 まだ驚いた顔をしてキョンくんは言った。キョンくんと長門さんは、ちゃんと会話が通じている。と言うより、キョンくんと長門さんにしか解らない話をしている。

「お前ら、いったい何の話をしてるんだよ!」
 谷口くんも目を丸くしている。本当にそうだ。一体、この人たちは何を言っているの? キョンくんも長門さんも、谷口くんの質問はまるで聞こえなかったように会話を続けた。
「わたしではない。涼宮ハルヒの力」
 涼宮さん? 力って何?
「なんで効かなくなったんだ?」
 キョンくんがそう言うと、長門さんは何故かわたしを見つめた。
「彼女が原因。そして、涼宮ハルヒが原因」
 わたし? 涼宮さん? 原因? 本当に何のことなの?
「すまんがよくわからん。後で詳しく説明してくれ」
「了解した」
 そう言うと、長門さんはいきなりくるりと振り返り、教室全体を見渡した。
 そして、手を中程まで上げると、何か、ものすごい早口で呟いて────


 ────あれ?


 わたし、今何をしていたんだっけ?



 4.切り替え──キョンとハルヒは結局……?

 ここからは俺が語らせてもらう。

 長門は例の呪文を唱えると、さっさと教室から出て行ってしまった。残された俺は、クラス中のポカンとした視線に晒されることになった。
「あれ? キョン? 今何話してたんだっけ?」
 谷口がアホ面で俺に聞いてきた。
「知らん。それよりさっさと弁当食おうぜ」
 適当に流すに越したことはないよな。さっきまでの会話の記憶は、すでにないはずだ。
 ところが、何か記憶にひっかかっていたのか、それともそこに立っている女生徒が気になったのか、国木田が傍らに立つクラスメイトにこんなことをぬかしやがった。
「キョンに聞きたいことがあるんじゃなかったけ?」
 おいおい、長門はどの程度情報操作をしたんだ? まさか思い出すんじゃないだろうな!
「え? えーと……?」
 彼女はまだポカンと口を開けたまま、俺を見た。いいぞ、そのまますっぱり忘れちまってくれ!
「あっそうだ!!」
 思いだしたのか? おいおい、長門、頼むぜ……。

「キョンくんは、涼宮さんと付き合ってるの?」

 俺は口に含んだ弁当を盛大に吹き出してしまった。



「まったく、酷い目にあったわよ……」
 放課後の部室で、いつになく元気のない団長様が、机に突っ伏して言った。
「キョンのせいね」
 少しだけ顔を起こし、上目遣いで俺を睨む。
「何で俺のせいなんだよ。俺だって被害者だ」
 むしろお前のせいじゃないか、とまでは言わないが、憮然として返してやる。当たり前だ。俺だって酷い目に遭ったんだ。

 そう、昼休みの教室で妙な質問を受けた俺は、弁当を吹き出して谷口にかけちまうと言う失態を犯した。それだけでも首吊りもんなのに、どういう訳か昼休みの途中だと言うのに、そのタイミングでハルヒが帰って来やがった。
 すでにクラス中の注目を浴びていた俺たちは、そこで質問攻めにあってしまった、と言うわけだ。つーか今までそれを言うのは谷口だけだったのに、何で今更みんな揃ってそれを言うんだよ……。
 でも、谷口に何度となく言われてたし、俺は流そうと思ったし、実際流せると思ったんだぜ。それなのに、ハルヒの奴は何故か真っ赤になって口をきかなくなっちまいやがった。
 おい! それじゃ誤解してくださいって言っているようなもんだろうが!!
 かくして、クラスメイトの生暖かい冷やかしを受けるという拷問のような時間を放課後まで教室で過ごした後、俺とハルヒは逃げるように部室に駆け込んだのであった。
 はい、誰か俺に拳銃をくれ。今すぐ。

 そうこうしている間に、他の団員も揃って、いつものように無意味で平和な団活が行われた。
 ハルヒがやたら不機嫌そうに大人しかったが、古泉によると閉鎖空間は発生していないらしい。と言うことは、見かけほど不機嫌ではないってことか?
 意外と平気ってことは、お前には羞恥心ってものがないのかよ。
「それは違うと思いますが」
 ニヤケ面が言った。意味がわからん。
「あなたって言う人は、本当に……」
 肩をすくめて首を振るくらいならはっきり言えばどうだ?
「それは止めておきます。ご自分で気付かなければならないこともありますからね」
 思わせぶりなことをいいやがる。
 それより、長門にことの次第を聞きたいんだが、ハルヒの前では聞けない。
 今日は無理かと思っていたら、古泉が耳打ちしてきた。
「帰り道、一旦別れたあとに長門さんの家に行ってください。今日の件について話があります」
 顔が近い耳に息を吹きかけるな気色悪い。だが、その話は了解だ。俺も訳がわからんからな。そもそも何であんな羞恥プレイに耐えなくてはならなくなったんだ。その理由を早く知りたい。
 ところが、やっぱり業務停止命令を出したくなるような問屋がまだ存在していたらしい。

 長門がいつも通りに本を閉じ、ようやく今日の団活も終わろうかと思ったとき、団長様のありがたくもない命令が聞こえてきた。
「キョンは居残り!」
「何でだよ! 用事があるならさっきまでの暇な時間に言えば良いじゃねぇか!」
 この理不尽な命令には抵抗するぜ。さっさと長門の説明を聞きたいんだよ俺は!
「うっさい! 団長命令! ヒラで雑用のあんたに拒否権があるわけないでしょ!」

 ……まったく、拒否権は発動してもたたき落とされるだけだった。

 結局俺は一旦外に出て朝比奈さんの着替えを待った後、さっさと帰っていく3人を見送って、ハルヒと部室に残った。
「一体何なんだよ」
 とは言ったものの、今日のあの羞恥プレイの件だってのは解っている。解っているのだが、ハルヒがどう思って何を言う気なのかはまったく解らん。
 ハルヒは俺をジトッとした目で睨むと、思った通りの話を始めた。
「今日の昼、何であんな話になったのよ」
 何でって言われてもだな、そもそも席替えのたびに不自然な俺とハルヒの座席位置が原因なんだが。今日の長門の話だと、それをハルヒが自覚するのはやばそうだ。
 さて、なんと言ってごまかそうかね。

 ……はい、何も思いつかなかった。
 畜生、古泉あたりに何か良い案を出して貰っておけば良かったぜ。仕方ないからある程度正直に言おう。

「わからん。あいつが突然聞いてきたんだよ」
 たぶん、クラスメイトの認識もそんなもんになってるはずだろう。だから、これで調度いい。ハルヒはまだ俺を睨んでいたが、ついと目をそらすと呟くように言った。
「あの子、あんたに気があるんじゃないの」
 は? なんて言った? 俺に気がある? それはないだろう?
 たぶん、あいつは何らかの理由で、ハルヒの情報操作をかいくぐり、席替えの不思議に気がついちまった。だが、それを説明するわけにはいかないだろ。
 しかも、それで何でそんなに不機嫌そうなんだ? こんな勝手な思いこみで意味なく不機嫌になって閉鎖空間なんか発生させた日には、俺が古泉に嫌味を言われるんだ。勘弁してくれよ、おい。
「そりゃないだろ。同じクラスってだけで、他に接点は全然ないんだぜ」
 とりあえず言っておく。
「あんたはあの子をどう思ってんのよ」
「……」
 なんなんでしょうね、この浮気現場を押さえた彼女が彼氏を問いつめるような質問は。どうせ聞いても団長としては団員の交友関係も把握してなきゃとか言われるんだろうが、何か納得行かないぞ。あーでも答えなきゃ閉鎖空間か。ちくしょー。面倒くせー。
「どうも何も、同じクラスの顔見知りだ。それ以上でもそれ以下でもない」
 まあ、これが妥当であり正直な気持ちでもある。
 名前と顔が一致するくらいで、まあ割と明るく周りの主に女子とコミュニケーションを取るタイプの子だってくらいしか知らない。
「あっそう」
 相変わらず不機嫌モードのまま、ハルヒは言った。
「帰るわ」
「おい、お前はただそれを聞くためだけに俺に居残りを命じたのかよ」
「そうよ、悪い?」
 まったく悪びれずにいいやがる。やっぱり反撃してやらなくちゃな。
「だいたい、お前のあの態度は何だよ。あんなの流しときゃいいのに真っ赤になっ……うぐっ」
 最後まで言う前にいいパンチを腹に食らった。痛ぇ。
「バ、バカキョン! あ、あの時はいきなりだったんだから、仕方ないじゃない!」
 俺が痛みにうずくまっている間にそんなことを叫んでいた。仕方ないのか? そうなのか。
「でも、あれで、クラスの連中、は、完全に、誤解した、んだがな」
 まだ腹に効いてるので切れ切れなのはご愛敬だ。
 さて、この誤解をどう解く気なんだろうな。

「……誤解なんて解かなくてもいいじゃない……」
 ん? 何か言ったか? どうも空耳が聞こえたようだ。
「アホ────!」
 今度は頭を殴られた。滅茶苦茶痛い。刻の涙も見れるってもんだぜ。
 いや、今のは俺が悪いな。本当は聞こえていたんだが、にわかに頭に入ってこなかっただけだ。
 て、何だこのシチュエーションは。
 俺とハルヒが付き合っているという誤解を解かなくていい?
 解かないと俺とハルヒが付き合っているってのが事実と受け止められるわけで……

 なんですとっ!? いいのかよ!?
 もしかして、俺はハルヒに告白されてんのか?

 そこ、俺にしては理解が早いとか言うなよ。俺だってその程度の理解力はあるんだ。
「ブツブツ言わない!」
口にでていたらしい。

 しかし、クラスの誤解を解かないと、明日から俺はどんな顔して登校すりゃいいんだよ。さっきもハルヒが変貌しちまってから、俺が何を言っても受け入れてくれなかったんだからな。そうだ、悪いが俺は明日からの教室での平和を取らせてもらうぞ。
「わかった。誤解は解かなくてもいいな」
 おい、ちょっと待て俺! 何を言っているんだ! 明日からどうする気だよ俺!
「そうよ! やっぱりキョンだってわかってるんじゃない!」
 何をだ、と言いたいところだが、まだ赤らんだ顔ですこぶるいい笑顔で言われちまうと今更否定も出来なくなるじゃねぇか。

 つーか、素直に言おう。今のハルヒはめちゃくちゃ可愛い。反則的に可愛い。

 くそう。これは何かの罠だ。一体誰の罠だ。孔明か。そんなわけねぇ。
 目の前にいるのは本当にハルヒか?
 何で俺の顔まで熱くなるんだよ、畜生。