自由落下の行き着く先は
ミニSS・小ネタ | 編集

ハルヒスレ埋めネタ

 あのときのことは今でも覚えている。例え頭をぶん殴られてすべての記憶を失ったとしても、それだけは忘れない自信があるくらいだ。
 初速0からゆっくりと確実に、重力にひかれて落ちていくハルヒ。戒めを解かれたハルヒを支配しているのは重力のみで、ハルヒと佐々木が作り出した空間だというのに万有引力の法則は律儀にそこにあったってわけだ。邪魔するものは何もない。空気抵抗はあっただろうが。

 そして、俺も戒めを解かれた。いや、自ら解いたのだろう。

 あのとき感じたように、後先も思い出も義務感も正義もなにもなかった。
 どうしなければならないか、どうすればいいかなんて考える必要すらなかった。

 ハルヒが重力のみに支配されていたのなら、俺を支配していたのはただハルヒのみだ。
 俺の精神はハルヒという引力にひかれるまま行動していたに過ぎない。
 邪魔するものは何もない。空気抵抗すら。


 さて──

 このまま引力に抵抗せずにいたら、落ちていく先はどこだろう?
 石畳の上に頭蓋骨を打ち付けることになるのか、それとも青白い光が柔らかく受け止めてくれるのか。


「キョン、何をぼーっとしてるのよ。さっさと部室行くわよ!」

 ハルヒはまるでそこに行けば何か面白いことが待っていることなど昔から知っているといわんばかりに俺の手首を引っ張っていく。
 引っ張られていること自体は最初から変わらんわけだが……。

 俺はあの少し大人びたハルヒの優しげな微笑みを思い浮かべた。
 着地点は、やはりあそこがいい。いや、あれだって自由落下の通過点かもしれないが。


 どっちにしても、どこに落ちたってそこではハルヒが笑っている。
 そんな未来を、俺は選択して見せるさ。