充電不足
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充電充電不足覚悟しろよ?過充電ショート

「きゃっ!?」
「危ねえ!」

 朝、いつものように登校して来た俺が自席に向かっている途中だった。
 丁度すれ違うところだった女子が、躓いて俺の方に倒れ込んできた。俺は考える暇もなく腕を伸ばして支えてやり、床との衝突を防いでやった。
「あ、ありがとう」
 にっこり笑ってお礼を言われると、朝から気分がいいね。こういうとき、素直にお礼を言えない誰かさんに見倣って貰いたいものだ。

「よう」
「………」
 自席について、これまたいつものように後の席に声をかけるが、返答がない。原因は聞かずとも解っているさ。さっきの些細なアクシデントだ。まったく、意外というかそうじゃないのか、こいつは嫉妬深い一面がある。あれは不可抗力に近いだろうが。
「何だよ不機嫌だな」
 原因には触れずに、さらに声をかける。
「別に」
「嘘つけ」
 そういうと、ハルヒはジロッと俺を睨んだ。
「エロキョン」
 誰がエロいんだよ誰が。まだエロい事はしたことがないはずなんだが。
「じゃあ、お前は俺にクラスメイトが転びそうなのを黙って見てろって言うのか?」
「う……そういうわけじゃないわよ!」
「まあ、そう妬くなよ」
「っ! 誰があんたなんかに……ってちょっとキョン!!」

 ハルヒはうまく挑発に乗ってきた。罠にかかったな。
 俺に怒鳴りつけるときにいつもするように、席から立ち上がってネクタイを掴んで俺を引き寄せようとした、その勢いを利用して机越しに抱き寄せた。当然、クラス中が注目しているが知ったこっちゃない。
「な、なな何してんのよバカキョン!!」
 いて、そんなに暴れんなって。って、おい、お前本気で殴ってるだろ!
 洒落にならん暴力をふるわれ、仕方ないので離してやった。
「あ、あんた、このあたしに何を……」
 真っ赤になって震えているのは怒り半分羞恥半分と言ったところか。思わずニヤニヤ笑ってしまう。
「何笑ってんのよ!」
 殴られた。いい加減そのすぐ手が出る癖は何とかならんのか。

 いや、そんなことより。
「あのなあ、ハルヒ。言っておくが、とっくの昔にバレバレだぞ」
「何がよ………って、え?」
 そりゃ、最近は毎日ハルヒにネクタイ掴んで連行されているんだ。誰だって、強制連行の理由に感づくだろ。実際、俺はすでにさんざん冷やかされているんだ。
「え……じゃあ………」
 人間の顔っていうのはまだ赤くなれるもんだったのか。トマトも顔負けだな。

「バカーーーーーーーーー!!」

 ハルヒはみたび俺を殴り飛ばして教室から飛びだしていった。いてーよ、畜生。

「……なあ、ホームルームを始めてもいいか……」
 いつの間にか教室に入ってきていた岡部が、おそるおそる俺に聞いてきた。そういや俺はいつも始業ギリギリに教室に入るんだっけな。
 どうぞ、とゼスチャーで示して俺も席に着いた。

 さて、ハルヒはどんな顔して帰ってくるのかね。
 帰ってきたら何て言ってやろうかと考えつつ、俺は窓の外を眺めていた。