ショート
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充電充電不足覚悟しろよ?過充電ショート

 サボった2限目が終わり、俺は教室に戻ることにした。さすがにこれ以上サボれない。まあ、またからかわれるだろうが、それはもういいさ。
 ハルヒは今度は引き留めなかった。
「もう、これ以上一緒にいたらあたしの操が危ないわ」
 ってどう意味だよそれ。やっぱり信用してねえんじゃねえか。

 なんてな。正直、俺がやばかった。

 さっきのハルヒは今までと比べものにならないくらい……可愛かった。いや、色っぽかった。
 上気した頬、潤んだ瞳、時折漏れる切ない声、何度も重ねた艶やかな唇……。

 ヤバイ、思い出すな! 教室に戻れなくなるだろ! ってかこれじゃまるでエロいことしたみたいじゃないか! 断じてそこまではしてない! したかったけどしてない!
 つーかよく我慢したぞ、俺。あんなハルヒを目の前にして押し倒さない男なんてそういないぞ。
 ……へたれなだけとか言うな。俺は約束を守っただけだ。
 畜生。あんなこと言うんじゃなかったぜ。そうすれば今頃は……。

 いやいや、とにかく俺は、今までの物足りないと思っていたハルヒが言うところの“充電”くらいが丁度いいってことが嫌と言うほど分かったのであった。
 ……やれやれ。


「授業サボってなーにやってたんだか」
 教室に入ると、思った通りニヤニヤ笑いを浮かべた谷口が話しかけてきた。予想を裏切らない奴だ。こんな予想が当たっても嬉しくも何ともない。
「お前が期待しているようなことは何もねーよ」
「どーだかな」
 まあ、こいつは否定しても無駄か。だけどな、人のことをあれこれ妄想するのはやめろ。
「まーいいんじゃねえの。青い春とかいて青春だ」
 何が青春だ。そう言うお前の青春はどうした。
「うっ それを言うんじゃねーよ」
 お前は黙らすのも簡単だな。見事な墓穴を掘ってくれるからな。

 アホな会話も終了し、日常が戻る。俺たちのことをとやかく言う奴もすぐ飽きるだろう。他人の色恋沙汰なんざ、そういつまでも話題にするもんでもない。クラスの連中だっていつまでもこんな話題に興味持っているほど暇ではない。
 そうだろ?

 そう思って高をくくっていた。しかし、予想を裏切る奴ってのも世の中存在するわけで。
 誰かって?
 ハルヒに決まってるだろ。


 休み時間が終了する合図である鐘が鳴ると同時に、ハルヒは教室に駆け込んできた。次もサボるんじゃなかったのか? 何て思うまもなく。
「キョン!!」
 温度で計れるのなら、どんな温度計も振り切ってしまいそうな笑顔でハルヒは俺に向かって走り寄ってきたかと思うとそのまま俺に抱きついた。
「おいっ! お前、何やってんだ!!」
 突然の襲撃に半ばパニックを起こしかけながら、俺はハルヒを引きはがそうとしてみたが、相変わらずの馬鹿力でしがみついてきやがる。ていうか、今朝の態度はどこへ行った? さっきまでの大人しかったハルヒは? 恥ずかしいんじゃなかったのか??

「うるさいわね、もういいのよ」
 ……開き直りやがった。どういう心境の変化だ。
「とにかく、授業が始まるから席に着け。話は後で聞いてやる」
「分かったわよ」
 渋々、という顔をしてハルヒは俺から離れて席に着いた。

 同時に授業のために教師が入ってきて、俺はクラスの連中の生暖かい視線から解放された。谷口が涙目だった気がするのは気のせいだろう。どうでもいいが。

 授業中、ハルヒはいつものようにシャーペンで俺を突いてきた。
「何だよ」
 小声で応じた俺に、ハルヒは赤い顔をして囁いた。
「……また、さっきみたいにしてよね」
 お前性格変わりすぎだろ、と思ったが悪い気はしない。

 俺はまた理性を総動員しなくてはならなくなりそうだな。保険をかけておくか。
 その“保険”を伝えて真っ赤になったハルヒの顔を確認すると、俺は前を向いた。

「今度はお前の信用を裏切ることになるかもしれないけどな」

 そろそろいいだろ? なあ、ハルヒ。


  おしまい。