SOS団(+α)の年賀状
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 正月の楽しみといえば、もちろんお年玉なんだが、それ以外にもそれなりの楽しみはある。
 お節はそんなに好きじゃないが、餅はそれなりに好きなので雑煮が食えるのは嬉しい。それから、お節じゃなくても正月だからと奮発した肉やカニなんかを食うのが我が家流で、それは毎年楽しみにしている。
 食ってばかりではないぞ。
 楽しみってほどじゃないかもしれないが、年賀状も多少期待している俺がいる。まあ、そんなに交友関係が広い訳じゃないんだが、会わなくなった友人からも来たりするので、充分楽しみにするに値するものだ。

 さて、正月を合宿で過ごした俺が年賀状を目にしたのは2日の午後のことであった。枚数は15枚程度か。多分、少ない方なんだろう。
 最近はみんなパソコンで作るので、絵については突っ込むところはあまりない……と思う。手書きの方が味が出そうではあるが、かく言う俺もパソコンで作っているので人のことは言えない。
 中学時代の友人からもちらほら来ていて、顔を思い出しながら眺めていた。
 もちろん、北高の連中からも来ている。

 えーと、これは谷口か。
『A HAPPY NWE YEAER! 今年こそ幸せなハイスクールライフを漫喫してやるぜ!』
 ……新年早々誤字の指摘なんざしたくないんだが、今時小学生でも間違えない英単語のスペルを2カ所も間違うとはどういうことだ。
 それに漫喫って何だよ、漫画喫茶のことか?
「谷口は今年も『幸せな』スクールライフは巡って来ないだろうな」
 思わずそんな独り言を呟く。
 ええい、アホな年賀状はもういい。

 次は……国木田だ。狙ったような順番だがこの際気にしない。
『明けましておめでとう。今年もよろしく。今年もいろいろとやってくれるんだよね?』
 国木田、何を期待している。そういやこいつはSOS団のイベントに割と楽しんで参加していたっけな。奇特な奴だと思う。
 だが、そういうことはハルヒに言えってんだ。

 さらにめくっていくと、今度は朝比奈さんからであった。裏面は印刷だが、宛名面は筆文字の手書きだ。そういや元書道部だったな。
 意外な一面を見た気になってニヤニヤしてしまった。
『明けましておめでとうございます。今年もよろしくね。 キョンくんにはいっぱいお世話になっているので、今年こそ少しでも恩返し出来たらいいなと思っています』
 今年と言わずに未来永劫よろしくしたいです。むしろしてください。
 健気な文面に思わず涙がこぼれそうになる……ってのは大袈裟だが、朝比奈さんにこう言ってもらえるなんて本望だ。恩返しなんて要らないですよ、朝比奈さんはそこに居るだけでおつりが来るくらいです。
 うん、次に会ったらそう伝えよう。

 そして次は……古泉か。
『おめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。本当に、お願いしますよ。いろいろとね』
 年賀状まで気色悪いんだよ。わざわざ“いろいろ”に傍点までふってやがる。どういう意味だ。
 本当に気色悪い。

 口直しが欲しくなってめくると、鶴屋さんからであった。鶴屋さんらしい元気な絵が踊っている。
『おめでとさんっ! 今年もめがっさよろしくっ!』
 残りは印刷の定型文だったが、この1行だけでも充分鶴屋さんらしさが出ている。
 いやいや、俺の方からよろしくしたいくらいです。朝比奈さんといい鶴屋さんといい、先に卒業してしまわれるのがとても寂しい。
 ……新年早々そんなこと考えるのはよそう。

 間にまた中学の友人からのはがきが挟まって、その次はハルヒからであった。

『あけましておめでとう! どうせあんたのことだからダラダラ過ごしてた
 んじゃないの? 冬休みだからといってボーッと過ごしているなんて、あ
 たしが許さないんだからね! そんな調子じゃ見付かるはずの不思議
 が逃げていってしまうわ! 冬休みの時間はSOS団のためにあるのよ!
 好きなように出来ると思ったら大間違いなんだからね! 今年こそ張り
 きって不思議を見つけるのよ!! あんたもしっかり付いて来なさい!』

 やたらエクスクラメーションマークの多い文面である。
 おい、ボーッと過ごすも何も冬休みの予定はお前が決めたSOS団の活動でいっぱいなんだが。むしろ冬休みの宿題が危ないんだが、たまには団活を休みにしてくれよ。つーか、せめて定型文の「今年もよろしく」くらいは書いたらどうだ。ま、書かなくても今年もハルヒに振り回される1年になるんだろうけどな。
 しかし、年賀状でまで怒り口調なのは何でだろうね。

「やれやれ」
 思わず口癖が出てしまった。

 しかし、何かおかしい。何となく文章に一貫性がないというか、内容はともかく何でも出来るハルヒにしては稚拙な文章に感じる。それに、原稿用紙ならともかく、白紙に自筆で文章書ときは自然と文節のところで改行しないか?

 ま、いいか。深く考えても無駄だろう。

 気を取り直して……最後は長門か。
 何だかやけに灰色の画面に、やはり灰色で門松の絵が描いてある。そして、どう見ても版画である。インクの乗り方を見ても間違いない。版画風印刷ではない。
 ……これ、自分で彫ったのか??
 それにしても何だか妙に暗い年賀状だな。文面は、版画で彫ったとは思えないほどの明朝体でこう書いてあった。
『門松は冥土の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし』

 な……長門?