SOS団の年賀状……の続き
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SOS団(+α)の年賀状の続き。ハルヒ視点

  サブタイトル:ハルヒの携帯は12文字で改行するらしい。


 あーあ、合宿も終わっちゃったわね。終わりというのは次の始まりで、感傷的になるべきものじゃないんだけど、みんなと別れた後は一瞬だけ感傷的になる。楽しかったな、と思うとこの楽しい時間がもっと続けばいいのにと思う。
 もちろん一瞬だけよ。
 楽しいことは、また新しく考え出せばいい。同じことの繰り返しじゃ、いくら楽しくてもいつかは飽きるってもんよ。
 SOS団冬合宿も無事に終わったんだから、次のイベントを考えなくちゃね!

 家に帰って荷物を整理したり、両親と少し会話したりしてから部屋に戻った。さて、明日はみんなで初詣に行くことになってるけど、今日はどうしようかしらね。することがない、なんて時間はもったいなくてあたしには許せない気分になる。
 1人で不思議探索にでも出ようかしら、と考えていたら携帯が鳴った。サブディスプレイには「メール着信:キョン」と出ている。
 キョン? 何かしら?
 あたしはふと年末に書いた年賀状を思い出して少し焦った。キョンは絶対気がつかないと思ってやってしまった悪戯。まさか気がついてないわよね? 
 そう、気がついているわけがない。だってキョンだもの。
 あたしはメールを開いてみた。
From: キョン
Subject: 年賀状の返事
Body:
俺がダラダラしているとで
も言うのかよ?休みなんて
好きな様に楽しく過ごすべ
きだと思っているが、いつ
だって結局お前に

 な、何よこれ!? 何で途中で切れてるのよ!
 じゃなくて、何?
 いや、偶然よね、偶然。キョンが気づくとも思えないし、わざわざこんなこと仕込んで来るとも思えないわ。そうよ、偶然よ。
 
 でも、偶然じゃなかったら?
 あたしが軽く混乱していると、再びキョンからメールが届いた。
From: キョン
Subject: 年賀状の返事
Body:
すまん、さっきのメールは
間違えて途中で送信してし
まった。

続きだが、いつだって結局
お前に巻き込まれてダラダ
ラしている暇なんかないに
決まってるだろうが。
まあ、今年もお前に引っ張
り回されることになるんだ
ろうが、お手柔らかに頼む
ぜ。

 途中で送信ね。本当に偶然? 故意犯?
 ああ、もう、本当に分からない!
 もし故意だとしたら、キョンもあたしを…………。
 って、ダメよ、自分に都合のいいように考えるなんて!
 だいたいキョンに限ってそんなわけないじゃない? こんなことを考えつくほど、頭だって全然良くないじゃない。いつだって眉間に皺寄せてるし、他の女の子には優しいのにあたしには小言や文句ばっかり言ってくるし。
 って、言ってて悲しくなってくるわね。あたしは何でこんなヤツのことが……。

 そんなこと考えていると、また携帯が鳴った。今度はメールじゃなくて電話。
 キョンからだった。

 ど、どうしよう。いや、逃げるわけにはいかないわよ! あたしはSOS団の団長なんだから!!
 よくわからない決意を込めて、電話に出ることにした。

『よう、元気か』
 相変わらずのやる気のない声。ほんとに、あたしは何でこんなヤツ……って、今はそんなこと考えてる場合じゃなかったわね。
「さっき別れたばかりじゃない。あたしはいつだって元気よ!」
 動揺を悟られないために強気で言ってみた。思った通り、受話器の向こうから溜息が聞こえる。
『ま、確かにその通りだ。ところで、メール見たか?』
 やっぱりその話題ね。でも、メール送った後にわざわざ電話してくるなんて、やっぱりそうなの?
「見たわよ。間違えて途中で送信するなんて、やっぱりマヌケね」
 一応気がつかないふりをして反応を伺ってみるわ。
『そうか。いや、2回も送って悪かったな』
「それでわざわざ電話してきたの?」
『いや、そういうわけじゃないんだが……』
「何よ?」
『その、何だな……』
 もう、イライラするわね!
「言いたいことがあるならはっきり言いなさい!」
 こんな歯切れの悪いキョンも珍しい。
『じゃあ聞くが、年賀状のあれは偶然か?』
 あたしとしたことがうかつだったわ。キョンの歯切れの悪さにイライラして、さっきのメールのことを一瞬忘れてしまった。
 それ以前に、まさかキョンが気づくなんて! 絶対気がつかないと思ってたのに!

「えっ う……あ……」
 取り乱したあたしは言葉が出なかった。どうしよう。何を言えばいいの? どういえばいいの?
 あたしが混乱していると、受話器の向こうからくぐもった笑い声が聞こえてきた。
「笑うなぁ!!」
『いや、すまん、もういいぞ。もうわかったから』
「わかったって何がよ!」
『さて、何だろうね?』
 悔しい、むかつく! 何であたしがこんなに焦ってるのにキョンはこんなに余裕なのよ!
「あ、あんただってあのメール、わざとでしょ!」
 精一杯の反撃として、あたしは決めつけてやった。ところが、キョンは白を切る気のようね!
『メール? 何のことだ? 間違えて途中送信したのは謝るが』
「わざとらしいわよ! 年賀状のあれに気がついていて、あれが故意じゃなくて何なのよ!」
『さて、本当にわからないんだが。メールがたまたまどうかなったとしても、それは偶然だろ』
「嘘つくな!」
『いや、偶然だ。こういう大事なことは面と向かって言わなくちゃならないんだろ?』
 ああ、何だか手玉に取られているようで本当に悔しい。どうしたら一矢報いることが出来るかしら。
 キョン相手に一矢報いるなんて生温いんだけど、今はまともに反撃出来そうにないわ。
『まあ、そういうワケだから、今時間があるなら表に出てみろ』
「え?」
『いいから、表に出ろよ』
 喧嘩を売っているようなセリフの意味を一瞬量りかねて、すぐに気がついたあたしは窓に駆け寄った。
「あんた、そこで何してるのよ!」
 思わず窓から叫んでしまった。何で、キョンがあたしの家の前にいるのよ?
「何って、電話をしているんだが」
「何ふざけたこと言ってるのよ。ちょっとそこを動くんじゃないわよ!」
 俺から来たのに動くわけないだろ、なんて声が聞こえてきた電話を無視して切ると、あたしは家を飛び出した。

 ああ、もう完敗ね。
 一矢報いるどころじゃないわ。
 年賀状にあんな小細工をしてしまった時点であたしの負け。
 認めるわ。認めるから。


 待ってなさい、せめて面と向かって言わせてやるんだから!!!



  あえてこんなところでおしまい。