目覚まし時計 キョンサイド
短編 | 編集

アニキャラ板ハルヒスレでもらったお題をSS化。

スレではAA作品(注:このSSと同じ物の最後にAAが貼ってあります)を作って頂いて感謝感激です。
いや、しかしあそこまでのセリフをキョンに言わせるとはwww

ところで頂いたお題
【涼宮ハルヒの憂鬱】涼宮ハルヒを語れ その75
946 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日: 2008/01/09(水) 09:58:26 ID:ZmSqs+r6
問2 次の問に、そのキャラになりきって言い分(セリフ)を考え、答えよ。(各50点)

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1) キョンの目覚ましがハルにゃんボイスだと、ハルにゃんにバレてしまった時のキョン。

2) ハルにゃんの目覚ましがキョンボイスだと、キョンにバレてしまった時のハルにゃん。


 玄関の呼び鈴が盛大に鳴った。
 随分派手な鳴らし方をする奴もいるもんだ、と思いながらドアを開けると、そこにいたのはハルヒであった。
「何しに来た」
「ちょっと、わざわざ来てあげたって言うのに開口一番それってどういうことよ!」
 まあ、確かに挨拶としては頂けないのは承知しているが、来てくれと頼んだ覚えはないんだが。それに、今日の放課後は特に疲れたんだよ。例によってハルヒの思いつきで、登下校以外にハイキングコースを2往復したんだからな。
 頼むから学校外での活動は週末だけにしてくれ。
「何言ってんのよ、情けない!」
 お前は元気だよな。それだけ元気があるんだったら俺のやってる雑用を肩代わりして欲しいもんだが、口に出すとかえって雑用が増える気がするので黙っておいた。
「で、何の用だ?」
「あんた、あたしの数学のノート持って帰ったでしょ!」
「数学のノート?」
 そうだった。
 数学の授業は俺にとって読経か催眠術のような物で、つい目蓋が重くなるのだった。そして、授業の大半を寝て過ごした後の休み時間、ハルヒは視線は窓の外に向けたまま、数学のノートを差し出してきたのだった。
「今日やった所は解ってないと後で後悔するから。さっさと写しなさい!」
 確かに重要な単元だったらしく、俺はありがたくノートを写させて貰った。しかし、その休み時間だけでは足りず、後でまた写そうとしまい込んでそのまま持って帰ってきてしまっている。
 そして、明日までの課題が出ていたはずだ。
「スマン。すっかり忘れてた。電話くれればこっちから持って行くのに悪いな」
「べ、別にいいわよ。どうせ暇だったし……」
 しかし、本当にハルヒらしくない。いつもなら電話一本で「さっさと持ってきなさい!」と命令するに決まっている。
 一体どういう風の吹き回しだ?
「だって、あんた、まだ写し終わってないでしょ」
 いや、そうなんだがまさかハルヒがそんな気遣いを見せると思わなかった。だがそこを突っ込むとハルヒがつむじを曲げること間違いなしだ。ありがたく厚意を受けることにしよう。
「ああ、じゃあ10分で終わらすから上がって待っててくれ」
 さすがにこれだけの気遣いを見せてくれるのに、寒空の中で待っていろとは言えない。
「あ、ハルにゃんいらっしゃ~い!!」
 喜色満面の妹と、何も言わないがニヤニヤしているお袋に迎えられ、ハルヒは俺の部屋に上がってきた。

 ハルヒが妹と遊んでいる間に、俺は急いで残りのノートを写し終えた。
 残りも少なかったので10分も掛からなかったが、その分集中していたのでハルヒと妹が何をしているかまったく気にしていなかった。
 俺もうかつだった。
 俺がノートを写し終えてホッと一息ついたときだった。
 やれやれ、これでノートを返せるぞ、と安堵した俺の耳に、明らかにノイズの混じったハルヒの声が飛び込んできた。

『キョン!! 早くしなさいよ!!   キョ』

 本来俺のベッドのそばにあるその声の主は、何故か妹の手の中にある。
 電光石火、考えるより先に俺は身体が動いていた。
 おそらく俺が生きている中で、こんなに早くこいつを止めたのは今が初めてに違いない。
 だが、時既に遅し。
「ほらね、キョンくんの目覚まし、ハルにゃんの声だったでしょ!」
 妹よ、何故お前が知っている。目覚ましは毎朝お前が来る前に止まっているはずだ。
 妹はニコニコ笑いながらハルヒを見上げていた。だが、ハルヒは反応せずに固まっている。
「あれえ、ハルにゃんどうしたの?」
「おい、妹よ」
「なあに? キョンくん」
「ちょっと俺はハルヒに大事な話があるから、少し席を外してくれ」
 こいつがいるとややこしくなりそうだ。
「え~、もっとハルにゃんと遊ぶ~」
 不満を言う妹を菓子で釣って追い出すと、俺はまだ黙っているハルヒに向き直った。

 さて、まだなんと言っていいか思いついてはいない。
 いいか俺、落ち着け。絶対何でハルヒの声が目覚まし時計に入っているか
「何であたしの声が目覚ましに入ってるのよ!」
 ……ほらな、聞かれるに決まっていただろ。
「いや、それはだな……」
 何か言わなければと口を開いたが言葉に詰まる。
 そもそも、俺は何でハルヒの声なんかを目覚ましにしているんだ?

 いや、それはほんの気まぐれだったはずだ。それなりに成長を続ける妹の起こし方が辛くなってきたから、目覚ましの音を変えてみようと思った。録音機能がついていたので、どうせなら誰かの声にしてみようかと考えたわけだ。
 長門の声じゃ寝ている俺に届かないし、朝比奈さんじゃむしろずっと布団の中でそのお声を聞きながら幸せに浸りたくなる。古泉? 論外だ、論外!
 結局ハルヒが一番都合がいいってことになった。自分で言ってて悲しくなるが、ハルヒに早くしろと言われると何故かそうせざるを得ない気分になる。こいつの声は良く通るし、目覚ましの音を変えてからは寝覚めもいい。別にそれはハルヒの声だからっていうんじゃなく、良く通る声で早くしろと言われたら誰だって飛び起きざるを得ない、そうだろ?
 だが、それをそのまま言うとこいつは怒るんじゃないか?
「さっさと言いなさい! 勝手に団長の声を使うなんて、罰が必要ね。どんな罰にしようかしら?」
 怒りながら笑う、という器用な表情でハルヒは言った。これは言わないと罰ゲームがどんどん加算されそうだな。どう言っても怒らせるなら正直に言ってもいいか。
「いや、だから、寝起きの悪い俺にとって、起こされるのはお前の声が一番良かったからだな……」
「えっ」
 別に変なことを言った覚えはないんだが、何故かそれまでの怒った笑顔をやめて、俺を見つめてきた。
「ど、どういう意味よ」
 何か赤くなってないか? どうした、暖房がききすぎてたか?
「どういう意味って、言葉通りの意味だが」
 俺がそう言うと、ハルヒは視線をそらして黙り込んでいた。
 何だ? まさか罰ゲームを何にしようかとか考えているんじゃなだろうな。俺の不安は杞憂に終わった。
「な、なら仕方ないわね! あんたがそう言うなら、そのままにしておいてもいいわよ!」
 横を向いたままそう言うと、
「じゃ、また明日!」
 と言って部屋を飛び出していってしまった。

 何だ? とりあえずお許しを頂いたらしいが、どうしたんだ?
 俺がハルヒらしくない言動に首を傾げていると、机の上の数学のノートが目に入った。
 あいつ、ここに来た目的を忘れて行きやがった。

 しょうがない、届けに行ってやりますか……やれやれ。


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 ハルヒが忘れていった数学のノートを返すために、俺は自転車でハルヒを追いかけた。途中で追いつくかと思ったが、さすがに非常識なくらい俊足のハルヒに追いつくことは出来ず、結局俺はハルヒの家まで来てしまった。

 …………そして、何故か俺は今、ハルヒの部屋にいる。
「な、何で部屋に入ってくるのよ!」
 ノートを渡したらすぐに帰ろうと思っていたのに、呼び鈴を鳴らしたら出てきたハルヒの母親に通されてしまったのだ。何となく強引で逆らえないあたり、ハルヒは母親似である。
「せっかく来てくれたんだからいいじゃないの」
 などと言う母親に反論できないところを見ると、意外に親には弱いみたいだな、こいつ。
 その後2言3言、勘違いによると思われる発言をした後、ハルヒの母親は
「ゆっくりしていってね」
 などと言って部屋を出て行った。
「あー、ノート忘れていっただろ」
 何か落ち着かない俺は、用件を切り出した。
「悪かったな、本当に。助かったぜ」
 差し出したノートを何故か不機嫌そうな顔で受け取ったハルヒは、まだ何も言わない。そんなハルヒの態度が気にならないわけではないが、落ち着かないので退散しようと思った時だった。
「ハルヒー! 飲み物用意したから取りにいらっしゃい!」
 ハルヒ母の気遣いで、飲み物が用意されてしまった。
「いや、俺もう帰ろうかと思ったんだが……」
 多分、無駄だろう。俺をハルヒの部屋まで通した有無を言わせぬ雰囲気を思い出すと、飲み物くらいは頂かないと帰れそうにはない。
「あーもう、せっかく用意してくれたんだから飲んでいきなさい! そしたらさっさと帰りなさい!」
 ハルヒは俺を睨むと、部屋を出て行った。やっぱりお前、実は母親に逆らえないんだろ。

 ハルヒが部屋を出て行ってようやく、部屋を見回す余裕ができた。思ったより普通の女の子の部屋だな。妹の部屋とはまったく雰囲気が違うが。もっと壁にお札とか魔法陣とか書いてあるようなカオスを予想していたので拍子抜けだ。
 そんなことを考えながらキョロキョロしている俺の目に、ベッド脇に置いてある時計が目に留まった。
別に普通の目覚ましで、普段なら興味を引かれる要素なんか何もない。
 ただ、先ほど俺の家であった事件を思い出し、ハルヒは毎朝どんな音で目覚めているのか聞いてやろうと思っただけだ。
 後先考えない思いつきってのは実行する前に一度考えた方がいい。後悔は先に立たない、ってことを身をもって知ることになるからな。
 目覚ましの試しにならす機能(なんて言うんだ?)をセットすると、かなりノイズの混じったマヌケな声が部屋に響いた。

『ハルヒ。起きろって。ハルヒ!』

 あー、いつも授業が終わっても寝ているハルヒを起こすときこんなこと言っていたな。自分が話している声を自分で聞くのと、録音された声で聞くのとでは結構違うもんだ。へー、俺はこんな声してんのか、なんて一瞬考えたが、恥ずかしくて聞いていられず、急いで目覚ましを止めたそのとき

「ちょっとあんた、勝手に何やってんのよ!!!」

 部室と同じように凄い勢いで開いたドアから真っ赤になったハルヒが飛び込んできた。お盆に載せたコーヒーがこぼれる勢いだ。
「いや、その……」
 勝手に人の物を触ったのだから怒られて当然だ。しかし、それ以上に俺はなんと言っていいか分からなかった。
「あ、あんた何で勝手に人の目覚まし触ってんのよ!」
 黙っている俺に予想通りハルヒは怒鳴りつけてきた。
「もう、信じられない!  何よ、もう、だって単なる電子音じゃつまんないじゃない!」
 いや、俺は何も言っていないんだが、何でお前は勝手に言い訳を始めるんだ?
「何か面白い声でも録音してやろうと思ったけどあんたのマヌケ声しかとれなかったのよ! あんたの声じゃつまらなさすぎるけど仕方がないから使ってやってるのよ! 感謝して欲しいくらいだわ!」
 ここはありがとうございます団長様、とでも言うべきなのだろうか。
「だいたい、あんただってあたしの声勝手に使ってるじゃないの!!」
 ていうか、何だ? 俺たちはお互いの声を目覚ましにしてたってことか? どういう偶然だ?
 いや、客観的に見たらものすごく恥ずかしいことしてるぞ、これ。お互いの声でそれぞれ目覚めているなんて、どこのバカップルだ。
 おい、バカップルって何だよ。誰と誰が。
 いや、俺がハルヒの声を使っているのは結局それが一番起きやすいからであってあいつの命令系の口調だと身体が動くのは俺がとうとう奴隷体質になってしまったからとか時折後悔することはあっても決してあいつの声が朝から聞きたいとかそう言うことじゃなく
 ……いかん、ちょっと頭を冷やせ。だんだん思考がおかしな方向に向かっているぞ。
「いや、まあ、俺のことはおいといて」
 一応許可はもらってるしな。別に変えてもいいんだが面倒だからそのままにしておくつもりだ。言っておくが他の理由じゃないからな。疑問は一切受け付けない。
「お前が俺の声を使っているのは驚いたが、つまらないなら変えたらどうだ」
「え……」
 ハルヒが表情を変えた。おい、何でこんなしょーもないことで不安そうな顔になるんだよ。
「いや、まあ俺は器用な声優でもないから俺の声しか出せないんだが、セリフくらいならリクエストに応えてやるが」
 そういうとハルヒはすぐに笑顔を取り戻した。単純な奴だ。
 さて、俺は何を言っているんだろうか。つまらないなら元の音か別人の声に変えりゃいい、そう思っての発言だったはずなんだが。しかし、わずかに見せたハルヒの普段見せない不安そうな顔を見ると、何故か俺が何とかしなくてはならない、なんて妙な気分にさせられる。多分見慣れないせいだろう。
「そうね、自分から言うなんてあんたもだんだん分かってきたじゃない!」
 あんまり変なセリフ言わすなよ。
「今更遅いわよ! 覚悟しなさい!」

 その後、「そんな言い方じゃダメ!」と何度もリテイクさせられながら、ハルヒ考案の言うのも恥ずかしいようなセリフを目覚ましに直接録音させられた。誰かがハルヒの家に行ってあれを聞いたなんてことになったら、俺は首を吊るかもしれない。
 俺の目覚ましにも直接録音してやる、なんて言っていたがどうしようかね。断る術も理由も思いつかない。

 仕方がないだろ?
 ハルヒは俺の声が、俺はハルヒの声が一番寝覚めがいいらしいのだから、な。