欲しければ欲しいほど バレンタイン編 おまけ
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 もう、キョンのバカ! いきなり何すんのよ!
 ほんとにいきなりだから、思わず殴っちゃったじゃないの!

 逃げるように部屋に戻って、ベッドに身を投げた。心臓は壊れそうなくらい鳴り響いている。唇にはまだ少し湿った感触が残っていて……。
「あーもう、バカキョン!!」
 行き場のない感情を何とかしようと叫んでみるけど、どうにもならなくて。意味なく枕を抱きしめてみる。何かにしがみついていないとどうにかなっちゃいそう。
 まだ胸のドキドキが収まらない。

 あたしの許可なくあんなことして、もう絶対許さないんだから。不意打ちもいいとこよ。
 だいたい、今日だってチョコを渡す気なんかなかったのに。渡す気のないチョコを用意するなんておかしいにもほどがあるわ。
 そんなこと分かっている。それでも、やっぱり止めておこう、あの時まではそう思っていた。

 そう、キョンがあたしが考えていたことを言い当てるまでは。

 あれも不意打ちだったわよ。何でキョンに分かったのか、未だに謎だわ。
 今までもそうだった。
 まだ髪が長かった頃、自分なりの法則で変えていた髪型に気がついたのもあいつ。
 面白い部活がないと嘆いたあたしに、なければ作ればいいと気がつかせたのもあいつ。
 変な夢を見て、今思うと凄く恥ずかしいけど、思い切って短い髪でポニーテールにしてみたら、あいつは夢の中で言われたことは本当だとばかりに「似合ってる」と言ってくれた。
 いつものあいつはあたしの言うことに反対したり小言を言ったりするばかりなのに、本当に理解して欲しいところはわかってくれる、そんな気がする。

 今日だって、そう。

 それに気がついたら、あたしはもうキョンを手放せなくなっていた。
 団員その1なんだから、団長のそばにずっといなさい、そうやって誤魔化すこともできたのに。それは違うと気がついてしまったから。
 あたしがキョンにそばにいて欲しいのは、団員としてじゃないわ。1人の男性として、あたしのそばにいて欲しいと思っている。これは確かに精神病。でも、気の迷いなんかじゃない。

「あたしは、キョンが好き」

 あえて声に出して言ってみた。うん、分かってたことだけど、やっぱり間違いないわ。もうどうしようもない。

 1ヶ月後、楽しみにしているからね、キョン。
 今日の不意打ちの仕返しは、どうしてやろうかしら?