世界一
ミニSS・小ネタ | 編集

夫婦設定注意

「何か言いたいことでもあるの?」
 ある休日。早起きしなくてもいいのだから、まだベッドでごろごろしている俺は、すでに起きて身支度を始めているハルヒを眺めていた。
 こいつは俺と違って時間を無駄にするのが嫌いだからな。さっさと起きて身支度を調え終えたら、朝食の支度も始めてくれるのだろう。
 別に何か言いたくて見ていたわけではないのだが、ジロジロ見ている俺を不審に思ったのか、ハルヒは俺に冒頭の疑問を訊いてきた。
 ふむ、言いたいことね。別に今伝える必要はないのだが、ないこともないな。
「言ってみなさいよ。言いたいことをため込むのは精神に悪いわよ」
 いつか聞いたようなセリフを言いつつ俺を覗き込んでくる。
 いや、別にため込んではいないのだが。せっかく近くに来たのだからとばかりに、腕を引っ張って抱き寄せた。
「ちょ、ちょっと! いきなり何すんのよ!」
 バランスを崩してベッドに倒れ込んだハルヒの抗議なんか聞く耳持たずに抱きしめると、俺は言ってやる。
「別にため込んでないさ。ただ、俺は世界一の幸せ者だと思ってるだけだよ」
 それまで腕から抜け出そうともがいていた力がすっと抜けた。相変わらずこういうストレートな表現には弱いんだよな。そういうところもたまらなく可愛い。
「な……何よ。キョンのくせに世界一なんて称号与えられないわよ」
 おい、お前が一番が好きなのは知ってるが、こんなことで張り合ってどうするんだよ。だいたい「世界一」なんて言えるのはお前のおかげであってだな……。
「う、うるさい!」
 俺のセリフを大声で遮った後、聞こえるか聞こえない声で続けた。
「世界一幸せなのはあんたじゃなくてあたしなんだからね……」
 そんなこと言われたら、やっぱり「世界一」の称号は譲れなくなるじゃないか。
 無性に今の気持ちを伝えたくなって、俺はハルヒにキスをした。
「……やっぱり、あたしが世界一なんじゃないの」
 この状況でそんな笑顔を見せられたら、正直、たまりません。

 結局俺たちがベッドを出て身支度を始めたのは、それから1時間後のことであった。
「もう、せっかく支度始めてたのに」
 いや、その、いろいろとすまん。
「罰として一緒に朝ご飯作ること!」
 一緒に、というのが罰なんだとしたら、やっぱり世界一の座は譲れないよな。


  おしまい。