花束
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 放課後、ハルヒは部室に来ないでどこかに行っていたと思ったら、花束を抱えて帰ってきた。
「なんだそれは?」
 思わず聞いてしまったのも無理はない。どう見ても、贈呈用にラッピングされた花束である。
 ハルヒに花束でもプレゼントする酔狂な奴でも現れたのか?

 ハルヒはニヤリと笑うと
「気になる?」
 と聞いてきやがった。気にはならねーよ。

「みくるちゃん! 花瓶ある!?」
 俺の返事は無視して朝比奈さんに活けるように命令すると、ハルヒは上機嫌で団長席に着いた。

「どうしたんでしょうね」
 俺の前に座っている古泉が、いつもの笑みを浮かべながら俺に聞いてくる。
「知らねーよ。誰かにもらったんだろ」
 俺はそう答えながら何となく面白くない物を感じていた。一体何なんだろうね。

 まあ、ハルヒが上機嫌だということは、世界が安定しているということなんだからいいことなんだろう。俺は自分にそう言い聞かせていた。
 何故言い聞かせる必要があるのかは自分でもわからん。

「さーて、みくるちゃん!」
 ハルヒはどこで調達してきたのか分からない花瓶に花を活けた朝比奈さんに、極上スマイルを向けた。ひっ と朝比奈さんは小さな悲鳴を上げる。あの顔を向けられるときはろくなことが起こらない、と既に学習していらっしゃる。

「来週、華道部に行くわよ! 華道部でフラワーアレンジメントのイベントやるんですって! マスコットキャラとして貸し出す話をつけてきたから!」
 相変わらず人権無視の提案ではあるが、ハルヒの持ち込むイベントとしては至極まともだ。どうせ1人いくらか取るんだろうが。
「最近の華道部は活け花以外もやるのか」
 どうも和室で剣山に花を刺しているイメージしかわかないが。
「バカね、フラワーアレンジメントも立派な活け花でしょ!」
 ハルヒは上機嫌のまま答えた。そうかもしれないが、華道と言えば和風しかないと思っていた。俺が無知なだけなのか。
「それで、ついでに花束の作り方を教わってたってわけ! せっかく作ったのを崩すのはもったいないけど、人の都合で切られた花をそのまま枯らすわけにはいかないでしょ!」

 みくるちゃんが花束持って立ってるだけできっとわんさか人が寄ってくるわよ、入れ食いね、なんて朝比奈さんに抱きつきながら話しているハルヒを見て、俺はホッとしていた。
 それが何でかね、なんて自分をごまかすのはそろそろ終わりにした方がいいのかもしれない。

 古泉のニヤケ面を疎ましく感じながらも、俺はそんなことを考えていた。


  おしまい。