悪戯心
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タイトル未定だったのですが、slime様に付けて頂きました。
本当にありがとうございます。

「あーもう、あっついわね」
 そう文句を言うな。俺だって暑いが言ったって涼しくなるわけじゃないだろ。
「うるさいわね! 我慢するより口に出した方が気が紛れるでしょ!」
 お前の気が紛れる分、俺がますます暑くなるような気がするのは気のせいだろうか。
「部室についたら着替えるわよ。この制服じゃたまんないわ」
 はて、部室にそんな涼しげな服があったかね、と思った俺はつまり去年のことなんかすっかり忘れていたわけだ。
「何よ、まだ誰も来てないじゃない!」
 そう言って部室のドアを相変わらずの勢いで開けると、俺の鼻先でドアを閉めやがった。はいはい、着替えるってわけね。
 しばらくして、ハルヒの不機嫌そうな声が聞こえてきた。
「入っていいわよ」
 お許しが出たのでドアを開けると、懐かしい格好をしたハルヒが面白くなさそうな顔をして団長席に座っていた。
「何でまたバニーガールなんだ?」
 と聞いて、ここで思い出した。去年も同じことやってたよな。確か暑いからと言って、それでも通気性が悪いとか文句を言っていたような気がする。
 しかし、暑いせいか網タイツもはかずに生足をさらけ出していて、なんつーか目に毒だ。
「同じことを去年もやっていただろうが」
 突っ込みつつ自分の席に着く。そういや他のメンバーはどうしたんだろうな。長門まで未だに来ないというのはとてもめずらしい。何か宇宙的問題でも発生しているんじゃないだろうな。
「そうだったかしら」
 忘れてるのかよ。
「これなら体操服の方がましかしら。あんたはバニーと体操服、どっち萌え?」
 暑いから着てるんじゃねーのかよ。俺の萌え要素を聞いてどうする。つーかどっちでもねえよ。
「エロキョンの萌え要素と合致しちゃったら危ないじゃない」
 ニヤニヤ笑ってそんなことを言いやがる。遊ばれてるのかもしれんが、あまりそう言う冗談を男に言うもんじゃねーぞ。
 ここでちょっと悪戯心が芽生えてしまった。
 ちょっと脅かしてやれ、そんな気分と、割と男の下心ってもんをなめているように感じられるハルヒに警告をしてやりたいって気分とがごっちゃになったような。
 俺は席を立つと、団長席のハルヒに近づいていった。
「そうだな、危ないかもしれねーよな」
 あえて真顔でそう言ってやる。
「な、何よ」
 俺の雰囲気がいつもと違うと感じているのか、強気で俺を睨んでくるハルヒはそれでも少し焦っているようにも感じられた。
「だから、そういう挑発的な格好でいるとあぶねーって言ってるんだよ」
 そんな広い部屋じゃない。もう俺はハルヒの目の前で、座っているハルヒを見下ろしていた。
「ちょっと、何する気よエロキョン!」
 まだ何もしてねーっつーのにエロキョン扱いかよ。まー、今はそう思わせるつもりで近づいたから無理もないけどな。
「さて、何をするんだろうね」
 わざとニヤリと笑ってハルヒの頭に手を伸ばす。
 殴られるかと思ったのだが意外なことにハルヒはきゅっと目を瞑って身体を強張らせた。
 そうやって目を瞑っているハルヒの頭に手を置くと、そのまま乱暴にクシャクシャとかき回してやった。
「バーカ。何もしねえよ」
 それだけ言うと、頭をポンポンと叩いてやる。
 ハルヒは拍子抜けたのかぽかんとした顔で俺を見ていたが、次の瞬間真っ赤になって俺に殴りかかって気やがった!
「こんのエロキョン! あんた何すんのよ!」
「何もしてねえだろ! おい、痛い! やめろって!」
 見事な足払いで俺を床に倒すと、そのままマウントポジションをとり、ネクタイを掴んで俺を睨み付ける。
「あんたあたしのことバカにしたでしょ! この代償は高くつくわよ。どうしてくれるかしら……?」
 いや、俺が悪かった、頼むから離れてくれ。お前の格好でそれだけ密着されると色々困る。第一目のやり場にも困る。

 まあ、この先の展開もお約束ってやつさ。
 ハルヒが俺の上で不敵に笑っているときに、部室のドアが開いたってわけだ。
 入ってきたのはもちろんまだ来ていなかった3人。
 そして、俺とハルヒのこの状況。

「「「…………」」」

 なんで3人とも無言なんだよ。

「いや、これは失礼しました。ごゆっくり」
 強張った笑みを顔にはりつけて一言そう言うと、古泉は他の2人を促して出て行きやがった。
 待てコラ、俺を助けやがれ! 妙な誤解をしてるんじゃねえよ!!
「何よ3人とも。どうしたのかしら?」
 毒気を抜かれたらしいハルヒがまだ俺の上でそんなことを言っている。どうしたのかしら、じゃねえだろ。
「いいから、頼むからどいてくれ! 俺もいろいろとヤバイ」
「へ? 色々って……?」
 そのとき、ハルヒは何かに気がついたらしい。つーかどうせなら最後まで気がつくなよ、頼むから!

「この……エロキョン!!!」

 再び殴り倒された俺は半分意識を失いながらも思わず祈らずにはいられなかった。
 神さまか仏さまか知らないが、誰でもいい。頼むから、明日まで生き延びられますように…………。


  おしまい。