職員室で怒られハルキョン
短編 | 編集

【涼宮ハルヒの憂鬱】涼宮ハルヒを語れ その86 より
122 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日: 2008/04/05(土) 22:48:17 ID:wt5IZlBB
二人して職員室で岡部に怒られるハルキョンが見たい

125 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日: 2008/04/05(土) 23:08:22 ID:D0FOpuKP
>>123
キョンがハルヒをかばう

ハルヒ反省

糖蜜空間

岡部糖尿

129 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日: 2008/04/05(土) 23:43:11 ID:Zx+Fn64u
>>126
ハルヒがクラスの人と口論になってキョンがハルヒをかばって事態がややこしくなる。
お互いの意見を聞くために岡部は喧嘩相手とハルキョンを別々に呼び出すとかでいいんじゃね?


 理不尽だ。とてつもなく理不尽だ。
 高校に入学し、涼宮ハルヒという無軌道暴走傍若無人女と出会ってしまってから、理不尽な目には散々遭ってきているし、ある程度諦観しているつもりもあるわけだが、しかしやはり理不尽な目に遭うと理不尽だと感じてしまうのは平々凡々たる一高校生としては当たり前の反応だろう。
 理不尽なんて言葉を反復法として使いたくなんかないのだが、思わず重ねてしまうのは俺が今の状況を本気で理不尽だと感じているからである。
 ハルヒは先ほどから不機嫌を示す計測器があれば針はMAXを越えて振り切っているであろう表情をして俺たちの担任である岡部を睨み付けており、その岡部はどうもハルヒから若干視線をそらし気味にしつつも小言を続けている。てか、生徒を叱責するのに視線をそらすって、最初から負けてないか?
「……まあ、お前たちの気持ちも分からなくもないがなぁ……」
 だから何で「お前たち」なんだよ。俺は関係ない。
「だからと言ってだな、さすがに殴るのはやりすぎだろう……」
 まったくもってその通りです、先生。殴るのはやりすぎです。でも俺は誰も殴っちゃいませんが。
 だから俺は止めたんだよ! 何で俺まで一緒になって説教くらわなきゃならんのだ。
 まったくもって理不尽だ。

 状況が分からない? だいたいお察しかとは思うが、俺とハルヒは放課後に職員室なんぞに呼び出しを受けて、岡部からありがたいかどうかはわからんが説教を受けているわけだ。
 何でこんなことになったのか。
 その原因は今日の昼休みにまで遡らなければならない。


 ハルヒが休み時間に教室から姿を消すのは相変わらずで、その昼休みもやはり授業が終わると同時に教室を飛び出していき、俺は俺でいつも通り谷口、国木田と顔をつきあわせて弁当を食っていた。話題もいつも通りたいしたことは話していなかった気がする。だが、なんの拍子にか、週末はどうしているなんて話題になっていた。
 俺の週末のうち少なくとも1日はSOS団の不思議探索とやらに潰されるわけであり、どのみちこの2人にはそれもばれているので今更隠す気もない。
「週末まで涼宮と一緒かよ。仲のいいこった」
 お前はまだそんなことを言うのか。ハルヒも確かに一緒だが、朝比奈さんと長門も一緒なんだがな。
「うっ それは羨ましいが……でも毎度同じメンツで街中を意味もなくウロウロするだけってのも寂しい週末じゃねえか」
「女の子と過ごせない谷口が言っても説得力ないよ」
 谷口のやっかみなのか哀れんでいるのか分からないような発言にさらりと国木田が突っ込みを入れる。
「毎週同じようなナンパの話ばっかりじゃん。成功したって話は全然ないくせにさ」
 国木田、それ以上言ってやるな。谷口の周りの空気だけどっかの灰色空間みたいになっちまったじゃないか。まあどうでもいいが。

 この程度の会話はいつものことであり、俺もSOS団なんて奇天烈な団体に所属していること自体、冒頭で述べたように諦観気味であるわけで、何だかんだ言ってSOS団に関わらせられることのあるこの2人、というか主に谷口だが、多少揶揄しようと何とも思わない。だからこれはいつもの日常として流されるべき会話であり、次の話題へと移るべき頃合いだった。
 しかし、この日に限って横槍が入ってきて、結局その横槍はハルヒによって取り上げられた挙げ句振り回されることになったわけだ。

「しかし、SOS団なんてよくやるよな。いい加減、2年にもなってバカばっかりやってると内心にも響くだろ」
 たまたま近くで弁当を食っていたクラスメートが横からそんな口を挟んできた。
「結局何をやっているって、意味のあることなんかやっちゃいないじゃねえか。どっちかというと周りに迷惑かけている方が多いんじゃないのか?」
 このクラスメートの言うことはいちいちごもっともで、確かに反論の余地はないのかもしれない。だが、何も知らないこいつに言われたくはない。ハルヒはあれでも一生懸命なんだよ。ハタから見れば意味もなく迷惑千万な行為にしか見えないかもしれないが、あいつはあいつでSOS団で楽しむことに一生懸命だ。入学した頃の不機嫌なハルヒを考えれば随分な差だとは思わないのか?
 だが、俺はそれらの反論を口にしなかった。いや、正確には口に出来なかった。ついでに言うなら谷口も国木田も押し黙っている。こいつらは俺以上に何も言えないに違いない。
 なぜなら。
 その余計な口出しをしたクラスメートの背後で、般若の面も裸足で逃げ出しそうな笑顔のハルヒが腕を組んで立っていたからである。
 クラスのほとんどが気がついている中で、そいつだけが気がついていないらしい。
「涼宮だってそろそろ現実を見ていい頃だろ。高2にもなってさ、未だにこの世の不思議とか言っちゃてる……」
「言いたいことはそれだけかしら?」
 いや、ハルヒ。話している途中で口を出したら言いたいことがそれだけなんてわけはないだろう、って突っ込み入れている場合じゃない。件のクラスメートは文字通り冷や水を浴びせられたように青ざめると、コマ送りのビデオみたいな動きでゆっくりと後を振り返った。

「す……涼宮……」
 奴が口に出来たのはそれだけだった。怒り心頭の笑顔、というハルヒにしか形容されないような顔を貼り付けたままハルヒは振り返ったクラスメートの顔面にそれは見事な右ストレートを炸裂させたからだ。
 止める暇なんかありゃしない。こうなることが分かっていたら俺は始めからタオルでも何でも投げ込んで開始1秒TKOを狙ったんだが、試合開始のゴングすら鳴っていないわけでそれも無理な話というものだ。ゴングが鳴らないのに殴るのがルール違反なんて言い訳はハルヒには通用しない。そんなものハルヒのルールブックには記載されていないどころか、ルールブック自体がハルヒにとって無用のものだろう。
 俺に出来たことと言えば、倒れたクラスメートに更にマウントポジションでダメージを与えようとするハルヒを無理矢理引き剥がすことくらいであった。
 おい、他の連中も見てないで手伝え。こらハルヒ、暴れるなよ! 何でこの暴れ馬を俺1人で抑えこまなきゃならんのだ。
「何よバカキョン! あんたあんなこと言われて黙って聞いていろっていうの!?」
 反論する暇すら与えなかっただろうがお前は。それより落ち着け。相手の言い分に腹を立てたとしても暴力に訴えていい結果が得られる例しはないんだよ、現代においては。
「だいたい何であんたは反論もせずに黙ってんのよ! それでもSOS団の一員なの!?」
 矛先を俺に向けて食ってかかってきやがった。
「とにかく落ち着け。文句は後でいくらでも聞いてやるから、とにかく暴力はやめろ」
「……何よ! キョンまであいつの言う通りだと思ってるわけ!?」
 いや、思ってないがな、取りあえず今は落ち着け。殴ってどうにかなるわけでもないだろ。

 そうやって殴り倒されたクラスメートは完全に蚊帳の外で俺とハルヒが言い合いを始めている間に、誰かが呼んだのか騒ぎを聞きつけたのか、担任岡部がやって来て、事態の収拾に努め始めたというわけだ。
 昼休みはもう終わる時間だったので、俺とハルヒは放課後職員室に来るようにと言われてしまった。そして冒頭へと続くわけだ。

 だから、何故俺もなんだ?


「冗談じゃないわ! あんな暴言を許すなんてどうにかしてるわよ! 何であたしが非難されなくちゃならないわけ!?」
 とうとう不機嫌メーターを振り切ったハルヒは爆発したらしい。岡部はたじたじとなっている。おい、教師が負けてどうするんだよ。
「団長としてあたしはSOS団を守る義務があるの! あらゆる暴挙暴言から守ってみせるわ!」
 その志はたいしたもんだと言ってもいいが、岡部の襟を掴んで唾を飛ばしながら言うのはやりすぎだ。
「わかったから落ち着け」
 もう今日何度目か分からないその言葉を諭すように言って、俺は岡部からハルヒを引き剥がした。俺、こんなことばっかりやってないか?
「お前の気持ちは分かるさ。俺だってあのタイミングでハルヒが現れなかったら反論くらいはしていたはずだ」
「当たり前じゃない! だいたいあんたはね……」
 いいから聞け。
「だがな、殴るのはやりすぎだ。相手は別に手を出してきたわけじゃないんだからな」
「何言ってんのよ! あたしたちの敵は徹底的に殲滅するべきでしょ! 生温い手段なんか選んでられないわよ!」
 敵ってなんだ敵って。
「そうは言うけどな、お前は手が早すぎだ。口で敵わないから手を出すなんて言われても反論出来ないぞ」
「そんなわけないじゃない!」
 そりゃ口でだってこいつに敵う奴なんかそうそういるとは思えない。だからこそ手を出す必要なんかなかったはずだ。世間の目や評価なんてアリの脳みそほども気にしないだろうが、それでもそろそろ学んでいい頃だろ、お前も。
 いや、本当は……
「ハルヒ」
「なによ」
「本当はわかってるんだろ」
「……何がよ」
 ほら見ろ、視線をそらすのが何よりの証拠だ。
「本当はやりすぎたって思ってるんだろ」
 自分の非を認めるなんてことは絶対にしたくないだろうが、こいつだって暴走した後にほんの少しだけ後悔したりすることくらいないわけではないだろう。それを俺や岡部の前で認めるかというとまた別の話だがな。
 ハルヒは黙ってうつむいてしまった。やはり認めたくはないのだろう。
「それにな」
 そんなハルヒに俺は言葉を続ける。
「外野が何を言おうと気にすることないだろ。少なくともお前が一生懸命やってることは俺はわかってるつもりだ」
 ハルヒは顔を上げて俺を見た。
「俺だけじゃない。長門も朝比奈さんも古泉だってわかってるさ。だからこそ、お前がわざわざ手を上げる必要なんかなかったんだ」
 ハルヒは少しの間俺を見て、次に岡部に視線を移し、最後に自分のつま先を眺めると一言、
「……悪かったわよ」
 と言った。一応謝ったことになるのか?
 俺はそんなハルヒの頭をポンポンとはたいてやる。
「わかればいいさ」
「何よ、キョンのくせに」
 少しふてくされた顔をして、ハルヒは呟いた。

「あー、お前ら、もういいわ。帰るなり部活するなり好きにしろ」
 ハルヒが謝ったからか、岡部が突然そんなことを言い出した。まあ、お許しが出たなら部室に行くとするか。もしかしたら灰色空間が出て古泉がバイトに行ってしまったかもしれないが。
「なんかもう俺胸焼けしそうだ……」
 職員室を出るとき、岡部がそんなことを呟いたのが聞こえてきた。どうしたんだ? 昼に定食でも食い過ぎたんだろうか。

 まあ、ハルヒも一応反省しているみたいだし、例のクラスメートも結果的にたいした怪我じゃなかったし、すべて丸く収まったことにしておくか。


  おしまい。